INNOVATION LEAGUE
SPORTS TECH TOKYO
2021年3月、コロナ渦で発足した自転車・ロードレースの国内リーグ「ジャパンサイクルリーグ」。リーグ開幕から無観客でのレース開催となり、決して全てが順風満帆な走り出しではなかったものの、ドローンやアクションカメラを活用したライブ配信を充実させるなど、関係者並びに選手の尽力と創意工夫によって、初年度にして盛り上がりを見せている。
地域創生を謳い「町そのものがスタジアム」をスローガンに掲げるジャパンサイクルリーグは、ロードレースを今後よりメジャースポーツへと成長させていきたい狙いだ。
そしてこの度、ジャパンサイクルリーグの新しいチャレンジとして「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」にコラボレーションパートナーとして参画することが発表された。「INNOVATION LEAGUE」とは、スポーツ庁が目指すスポーツオープンイノベーションプラットフォーム構築の推進を目的としたプログラムであり、アクセラレーションを通じて、ジャパンサイクルリーグの課題やアセットと採択企業のテクノロジーや事業アイデアを掛け合わせることで、新たな事業やソリューションを創出することを目指している。
「INNOVATION LEAGUE 2021」説明会全体の開催レポートはコチラ
https://ift.tt/38ukCu9
チャレンジを続けるジャパンサイクルリーグの動きについて、主役である選手たちはどのように感じているのだろうか。
国民体育大会ロードレースを2連覇、アジアツアー最高クラス・HCクラスでのステージ優勝経験を持つ中島康晴選手にインタビューを行い、新リーグの構想に対してどのような考えを持っているのか、また「INNOVATION LEAGUE」を通じてロードレースとテクノロジーはどのように融合し得るのかなど、ロードレース選手の本音を余すところなく聞いた。
中島康晴選手。 INNOVATION LEAGUE
INNOVATION LEAGUE
PROFILE
中島康晴(なかじまやすはる)
1984年12月27日、福井県越前市生まれのロードレース選手。キナンサイクリングチームに所属し、2021シーズンはキャプテンを務める。アジアツアー最高クラス・HCクラスでのステージ優勝経験を持ち、2015年にはアジアツアーのステージレース個人総合2連覇の偉業を成し遂げた日本ロードレース界きってのレース巧者。
タフな展開になればなるほど、スマートな戦いぶりで勝利を呼び込む。KINAN Cycling Teamではスプリント路線の筆頭格として、平坦ステージでの上位進出を狙う立場にもある。2019年はツール・ド・台湾でスプリント、逃げと大車輪の走りを見せてポイント賞を獲得。
チームではまとめ役であると同時に、イベントや自転車安全教室での“しゃべり”も担当。その話術を生かして、海外ビッグレース中継では解説者としても活躍する。
Q:まず初めに、中島選手のこれまでの競技人生についてお聞かせください。
「中学生時に乗っていたママチャリがパンクをして、近所の自転車屋さんで修理をしてもらっている時に『自転車を直している間、楽しい自転車があるから乗ってみなよ』と店主に進めてもらったことがきっかけで、その後、高校の自転車部に入ったところからキャリアが始まりました。
中学校までは卓球部で室内競技をやっていたので『こんなに開放感があって、道さえあれば世界中が競技場になるスポーツがあるんだ』と、すぐに自転車の楽しさにのめり込んでいきました。高校、大学と進学していくうちに、ツール・ド・フランスをはじめ国際大会にも出場したいという想いが強くなり、大学卒業後、フランスを拠点に活動している日本のチームに加入して選手生活が始まりました。
競技成績としては2014年にツアー・オブ・タイランドという6日間にかけて行うアジアツアーで達成した個人優勝がターニングポイントになっています。
日本国内では本場欧州と比べ年間のレース数が少なく、特に公道を使ったレースは限られているため、日本人選手は公道レースの中でチームメイトを上手く使うことや、閉鎖されたサーキットとは違う〝普通の道路〟ゆえに生じるアクシデントや不整備なコースに対応することを苦手としていました。その点からも、ジャパンサイクルリーグが出来て、公道を使ったレースが年間で開催されることは選手にとっても非常にありがたいことです。」
2021年はスプリント、逃げに加えて、得意とするダウンヒルのテクニックも必見。 INNOVATION LEAGUE
Q:ジャパンサイクルリーグの発足について、中島選手はどうお考えですか?
「ジャパンサイクルリーグが立ち上がった時は、正直びっくりしましたね(笑)。海外レースの経験から、一般の道路を使うことの難しさを知っていたので、日本全国での公道レース開催に踏み込んでいくことに驚きがありました。
今まで国内レースはサーキットでの開催が中心でしたが、公道レースではマンホールひとつで戦況が変わることもあり、その難しさや奥深さを若手選手含め体感できることは非常にポジティブではないかと思います。
コアファンの方々はこれまであまり見ることが出来なかった連携プレーやディフェンスなどを見ることができ、ライトファンの方々は景色や自然を楽しみながら観戦することができるため、ロードレースの楽しみ方の幅が広がっていることを感じます。また地域の方々と交流する機会も増え、自転車競技が盛り上がり始めているのは素直に嬉しいですね。」
Q:ジャパンサイクルリーグのプロモーション活動についてはいかがですか?
「リーグ主導ですごくプロモーションに力を入れていることが選手たちにも伝わってきています。勝利者を讃える表彰台の印象も華やかに、インタビューでも細かに選手のストーリーを引き出してくれています。
ジャパンサイクルリーグは地域創生をテーマに掲げており、ロードレースをきっかけにその土地ならではの景色や特徴を国内外に発信していきたいと考えています。選手たちも意識が変わり、情報発信に対して積極的になったことも、新リーグがもたらした良い変化のひとつですね。
また、今後ジャパンサイクルリーグには世界遺産や観光地をレースのスタート地点にして、その地域ならではのシーンを発信することにチャレンジしてほしいです。海外ではモン・サン・ミシェルをスタート地点としてパレードランを行うように、日本で言えば神社仏閣や富士山、温泉街など、ロードレースが開催地域の魅力を世界に発信していけるツールになっていけたらと考えています。」
ロードレースが開催地域の魅力を世界に発信していくツールに INNOVATION LEAGUE
Q:今回、INNOVATION LEAGUEに参画することに関してはどう感じていますか?
「レース中に、GPSで選手がどこを走っているのかが常時見られるようになったり、選手個々のスピードや心拍数、パワーなどがリアルタイムで分かるようになると非常に面白いなと思います。
中継映像でこのような選手の細かな情報が伝えられることはあるのですが、ファンの皆さんが、応援しているチームや選手の情報にそれぞれ好きなタイミングでアクセスできるようになると、より楽しみ方が広がりますよね。この辺りのデータ活用は海外でもまだ実現できていないので、日本のテクノロジーの先進性を発信する良い機会にもなるのではと思います。
またロードレースの選手は自転車および自分の身体に、計測チップやGoProなどのカメラ、心拍やパワー計、GPSの位置情報、それらを記録する機材を付けて走行しています。タイムを縮めるために、重さと空気抵抗は少しでも減らしたいところではあるのですが、出場選手全員に同じ条件で機材を設置されるのであれば問題ないです。自転車競技をより多くの人に楽しんでいただけるなら、率先して機材を付けてくれる選手も多いのではないでしょうか。
フェンシングがAI技術を活用して剣先の軌道のトラッキングした映像は非常に印象的で、自転車競技もフェンシングのようにテクノロジーを活用することで、競技に詳しくない方にもその魅力を直感的に伝えることができるようになると思います。
今まで見ることができなかった映像や、知ることができなかった選手たちのデータを可視化することでロードレースの楽しみ方はまだまだ広がるはずで、INNOVATION LEAGUEで新しいテクノロジーとロードレースが融合する瞬間はとても楽しみです。」
「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」への応募を希望される企業担当者の方は以下のURLよりご応募ください。
https://ift.tt/2WX8UFw
INNOVATION LEAGUE
Q:中島選手にとって応援してくださるファンの皆さんはどんな存在ですか?
「率直に、大きな力を貰える存在です。ロードレースは観客の目と鼻の先を選手が通過するので、ファンの皆さんの声援はダイレクトに私たちの推進力になります。
ロードレースには様々な楽しみ方があり、スピード溢れる選手の走行シーンを見たい人だけでなく、登り坂で苦しそうにしている選手の姿を見たい人もいれば、レースの路面にペイントしてくださるファンの方もいます。
一方で、観客の皆さんは通常、横からしかレースを見ることができないので、歩道橋を作って真上から走行シーンを見てもらったり、ガラス張りの天井を作ってその上を選手が通過するなど、今までとは異なる視点からレースを見ることができると良いですよね。ドローンや中継技術を活用した新しいロードレースの観戦体験が発明されることを、INNOVATION LEAGUEには期待したいです。
現状、ジャパンサイクルリーグを応援してくれている既存のファンは、自分自身も自転車に乗っている競技者の方がメインになっています。既存のファンの皆さんを大切にしながら、今後はサッカーや野球のように、自分自身は競技者ではなくともロードレースを見て楽しんでくださるファンを増やしていきたいですね。」
INNOVATION LEAGUE
Q:最後に、中島選手の今後の目標について教えてください。
「競技者としてはジャパンサイクルリーグで勝つことです。ベテラン選手でも勝てるのが自転車競技なので、アラフォーの星になれるように頑張りたいと思います。
競技外では、もっともっと多くの方に自転車競技の奥深さや面白さを知ってもらいたいと考えています。現在取り組んでいるレース解説の仕事や福井県の小学校への訪問に留まらず、様々なことにチャレンジしていきたいです。」
執筆協力:五勝出拳一
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事。スポーツおよびアスリートの価値向上を目的に、コンテンツ・マーケティング支援および教育・キャリア支援の事業を展開している。2019年末に『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。
Baca Kelanjutan 「ロードレースの魅力をテクノロジーで可視化したい」 中島康晴選手が語る ジャパンサイクルリーグの青写真 - スポーツナビ - スポーツナビ : https://ift.tt/3zS7V8e
Bagikan Berita Ini
0 Response to "「ロードレースの魅力をテクノロジーで可視化したい」 中島康晴選手が語る ジャパンサイクルリーグの青写真 - スポーツナビ - スポーツナビ"
Post a Comment