
※中篇は2月9日(火)、後篇は10日(水)に掲載する予定です。
『WIRED』日本版が毎週木曜夜にお届けする会員限定のオンラインイヴェント「WIRED Thursday Editor's Lounge」。2月11日(木)は祝日のため、お休みとなります。18日(木)の回をお楽しみに!
ジャーナリスト。『WIRED』US版エディター・アット・ラージ(編集主幹)。30年以上にわたりテクノロジーに関する記事を執筆しており、『WIRED』の創刊時から寄稿している。著書に『グーグル ネット覇者の真実』『マッキントッシュ物語―僕らを変えたコンピュータ』など。
「7月の深圳市。気温は高く、木々は生命に満ち溢れています……」
2018年の夏に中国の通信機器大手、ファーウェイ(華為技術)が撮影しYouTubeに投稿した動画は、バリトンヴォイスのナレーションで始まる。これは、1960年代の教育用映画のような少し古風なスタイルで同社のイヴェントを記録したもので、ファーウェイのキャンパスを空撮したドローン映像で幕を開ける。
そこは「中国のシリコンヴァレー」として知られる都市の、高層ビルに囲まれた緑豊かな一角だ。オーケストラ用に編曲されたベートーヴェン作「トルコ行進曲」の快活なメロディが流れるなか、1台のリムジンカーがキャンパス内をゆっくりと進み、広壮な屋根をもつ中国の仏塔建築と古典ギリシャ様式とが混ざり合った、ホワイトハウスに似た雰囲気も漂わせる白い建物に近づいていく。
到着したリムジンに、白い服を着たふたりのドアマンが歩み寄る。そのひとりが後部ドアを開け、ファーウェイの輪番会長のひとりである郭平(グオ・ピン)が進み出て、クルマから降りるゲストに手を差し伸べる。ふたりの男性はレッドカーペットの上を歩いて壮大な大理石の床の建物に入り、階段を上って両開きのガラスドアを通り抜け、式典会場の豪華なホールに向かう。
数百人の出席者が立ち上がって割れるような喝采を贈り、ファーウェイ創業者の任正非(レン・ツェンフェイ)がゲストを迎える。レンが着ているスカイブルーのブレザーと白いズボンは、着たい服はどんなものでも着られる権力者であることを示している。
アカデミズム界に埋もれていた価値ある成果
ダークスーツを着た同社幹部数人による真剣なスピーチのあと、中国におけるビル・ゲイツ、リー・アイアコッカ、ウォーレン・バフェットを一身に体現したような人物であるレンが表彰台に上がる。白い制服を着た3人の若い女性が入場し、軍隊ふうに腕を振りながら行進しステージに上がって一斉にゲストに向き直り、サラダ用プレートほどの大きさの額装された金のメダルを差し出す。フランスの国立造幣局モネ・ド・パリ製のメダルには勝利の女神が彫られ、バカラ製の赤いクリスタルがあしらわれていた。喜びに満ち溢れた様子で、レンはゲストにメダルを贈呈する。
この日の主賓は、世界的な指導者でも、億万長者の財界人でも、戦争の英雄でもない。エルダル・アリカンという、あまり知られていないトルコ人科学者だ。セレモニーの間中、彼は身じろぎひとつせず、体にフィットしていないスーツを着てじっとしていた。その様子は、まるでごく普通の演劇好きの人が、突然ブロードウェイの舞台で主役になったかのようだった。
だがアリカンは並みの科学者などではない。その10年前、彼は情報理論の分野で重要な発見をしていた。その後ファーウェイは、アカデミズムの世界に埋もれていた、情報理論において画期的な成果であるアリカンの理論に着目し、多額の資金を使い最高の技術者たちを動員して、ビジネスの世界で価値あるものにつくり上げた。
そして同社はその技術革新を、現在世界中で実用化が始まっている第5世代移動通信規格5Gテクノロジーの基盤技術という揺るぎなく大きなものとして確立するために総力を挙げて取り組んだのだ。
中国が欲する欧米の尊敬と認知
過去30年間のファーウェイの台頭は、中国では知性と努力、そして信念の勝利としてたたえられてきた。おそらく、本国でこれほど愛され、米国からはこれほど非難されている企業はないだろう。これは少なくともファーウェイの隆盛が中国の国家主義的な産業政策の特徴を示していることと、同社による知的財産の盗用が疑われていることも理由だ。
米司法省は、技術の盗用、侵害や妨害、虚偽申告などの広汎な罪でファーウェイを起訴した。この記事が出る時点で、レン・ツェンフェイの娘で同社最高財務責任者(CFO)のメン・ワンツォウはバンクーヴァーで自宅軟禁の状態にあり、イランとの禁輸に違反した容疑による米国への身柄引きわたしに抵抗している。
米国政府は国内でファーウェイの5G製品を禁止し、ほかの国にも同様の措置をとるよう働きかけている。ファーウェイは罪を認めておらず、レンは一連の動きを政治的なものだと語っている。
Baca Kelanjutan ファーウェイはいかにしてテクノロジーの未来を手にしたのか:5G、国家の威信、「ノイズ」を征服した男(前篇) - WIRED.jp : https://ift.tt/2LwtzLu
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