［香港 ８日 ロイター BREAKINGVIEWS］ - 中国のバイオ技術セクターが新型コロナウイルスのパンデミック（世界的な大流行）のおかげで注目されている。康希諾生物(6185.HK)といったほとんど知られていない企業がＣＯＶＩＤ－１９（新型コロナウイルス感染症）のワクチンや治療法開発で先頭集団に入っており、中国と世界の外交的な緊張が高まっているにもかかわらず、グローバル化しそうな勢いとなっている。
６月８日、中国のバイオ技術セクターが新型コロナウイルスのパンデミック（世界的な大流行）のおかげで注目されている。写真は北京の研究所で、新型コロナウイルスの抗体を研究する科学者。３月３０日撮影（２０２０年 ロイター/Thomas Peter）
世界保健機関（ＷＨＯ）によると、現在のところ１３３のワクチン候補が開発中で、そのうち１０が臨床試験の段階に迅速に進んだ。アストラゼネカ(AZN.L)、ファイザー(PFE.N)の世界大手や、バイオ技術業界で成長株のモデルナ(MRNA.O)はいずれも年末までのワクチン供給を目指している。
より驚きなのは香港上場の康希諾生物を含む一握りの中国企業だ。天津を本拠とする同社は３つのワクチン候補を保有。このうち中国軍との提携で開発した１つは４月、世界で初めて臨床試験の第２相試験（フェーズ２）に移行した。ナスダックに今年上場した天境生物（Ｉ－Ｍａｂバイオファーマ）(IMAB.O)といった中国企業も開発競争で勢いが増し始める可能性がある。
賞金は巨額だ。モルガン・スタンレーのアナリストの推計によると、ＣＯＶＩＤ－１９のワクチンは向こう２年で世界的に３００億ドルの販売チャンスとなる可能性がある。フロスト＆サリバンの調査によると、これは全世界の２０２２年バイオ医薬品販売高見通しの１割未満だ。しかし、中国の有望なバイオ技術企業が販売を支配することができれば、その合計額は成長著しい中国市場で３分の１超に相当する。色めき立った投資家は既に、２月以降で康希諾生物の時価総額を約３０億ドル増やしている。
中国と他国の関係が悪化しているものの、バイオ技術分野ではクロスボーダーの提携が加速している。５月にはカナダ国立研究機構が康希諾生物と新型コロナのワクチン開発で協力すると発表。米イーライリリーと上海君実生物医薬科技(1877.HK)は近く、君実生物のＣＯＶＩＤ－１９治療法の臨床試験を開始する。
経済成長の復活は、国内の人口に対して十分なワクチンと治療法へのアクセスを確保できるかという政府の能力にかかっている。中国によるブレークスルーは中国政府に大きな外交上の武器を与えるほか、国内のイノベーションを促すトップダウン戦略の正当性を立証することになる。長らく安全と質のスキャンダルに見舞われてきた中国産業界にあって、バイオ技術のスター企業は重要なマイルストーン達成に近付いているのかもしれない。
背景となるニュース
＊カナダ国立研究機構は５月１２日、カナダにおける将来のＣＯＶＩＤ－１９ワクチン試験への「道を開く」ため、中国の康希諾生物が同機構に協力すると発表した。
＊ＷＨＯによると、康希諾生物は既に臨床試験に入っている１０の新型コロナワクチンの１つを手掛けている。
（筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています）
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June 09, 2020 at 06:21AM
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