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睡眠時無呼吸症候群の治療でも活躍する新テクノロジー(朝日新聞デジタル&[アンド]) - Yahoo!ニュース

いま、日本では「睡眠不足」が広がっている。2018年に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査」によると、成人男性の36.1%、成人女性の 39.6%が6時間未満の睡眠しか取っておらず、男性の30~50 歳代、女性の40~60 歳代では4割を超える。また、ここ1カ月間、睡眠で休養が十分にとれていない人の割合は21.7%で、2009 年から増加傾向にあるという。

慢性的な睡眠不足が広がる中、とりわけ問題となっているのが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」だ。睡眠中に呼吸が止まる、または浅く、弱くなり、それによって日常生活に障害を引き起こす疾患で、日中に強い眠気を感じることもあるため、車の運転などに支障をきたす恐れがある。

この病気の治療でも、新しいテクノロジーが登場している。

未治療の人も多いと推定される眠りの病気「SAS」

昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター長の安達太郎さんは、「睡眠時無呼吸症候群は、日中の集中力低下や眠気だけでなく、長期的に見ると高血圧、心筋梗塞、脳梗塞など循環器系の疾患を起こすリスクが高まります」と説明する。その原因はわかっているのだろうか。

「原因の多くは肥満だと言われていますが、実はあごの骨格が小さい日本人は太っていなくとも睡眠時無呼吸に陥りやすいと言われています。事実、日本人の無呼吸患者の4割は非肥満(BMI 25未満)であるというデータもあります」(安達さん)

安達さんによると、国内の潜在的な患者は300万人とも500万人とも推定されているという。疾患についての啓発が進み、かつてに比べれば病院に足を運ぶ人は増えているものの、現在、治療を受けている患者数はおよそ50万人。つまり9割の人が診断を受けないままである可能性があるのだ。

小型化、通信機能の追加……進化する「CPAP」

実際に睡眠時無呼吸症候群であるとの診断を受けた場合、治療には、生活習慣の見直しをはじめとするいくつかの選択肢がある。ただし、骨格が原因となっている場合にはCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)と呼ばれる治療法を行う医療機器(以下、CPAP装置)の使用が第一の選択肢となる。この機器は、気道の狭くなっている部分を空気圧で広げることで、睡眠中の無呼吸状態を防いでくれる。

CPAP装置は2010年代半ばごろから、かなりのスピードで進化を遂げている。気道に空気を送り込むチューブやマスク、そして装置そのものが大きく、せっかく治療を始めても、途中でやめてしまう患者も多かったそうだ。しかし、年々小型化が進み、出張や宿泊などにも気軽に持って行けるようになった。

フィリップスジャパンでCPAP装置の開発を手がける安部美佐子さんは次のように語る。

「私がフィリップスに入社したのは7年ほど前。CPAP装置のサイズは現在の2.5倍ほどありました。当時と比べると本体はもちろん、ホースをはじめとする付属品も細く、軽くなりました。また以前は、鼻と口を覆い、後頭部でガッチリ留めるタイプのマスクが多かったのですが、現在は鼻から空気を送り込む形です。さらに頭頂部にホースを配置することで、マスクをしたままでも寝返りがしやすいよう改良されています」

また、センシング(計測・数値化)技術の向上により、患者の呼吸の状態をモニタリングしながら空気の量や圧力を調節するCPAP装置も登場しているという。

「CPAP装置が気道に送り込む空気の量が少ないと、無呼吸状態が発生してしまいます。とはいえ、逆に量が多過ぎると、腹部の膨満感やげっぷの原因になります。そこで最新のCPAP装置はデバイス本体の出口部分で患者さんの呼吸の状態をセンシングしながら、無呼吸が起こりにくいように空気の量や圧力をちょうど良く自動調整するのです」(安部さん)

また、センシング(計測・数値化)技術の向上により、患者の呼吸の状態をモニタリングしながら空気の量や圧力を調節するCPAP装置も登場しているという。

「CPAP装置が気道に送り込む空気の量が少ないと、無呼吸状態が発生してしまいます。とはいえ、逆に量が多過ぎると、腹部の膨満感やげっぷの原因になります。そこで最新のCPAP装置はデバイス本体の出口部分で患者さんの呼吸の状態をセンシングしながら、無呼吸が起こりにくいように空気の量や圧力をちょうど良く自動調整するのです」(安部さん)

さらに、機器から直接、あるいは患者のスマートフォンを経由する形で、クラウド上に使用データをアップロード出来るCPAP装置も各社から発売され、広く普及しつつある。これにより患者は自分のデータが記録されたSD カードなどのメディアを医療機関に持参する必要がなくなった。 こうしたデータ送信の自動化は、治療の効率化にもつながっている。

「僕は今日の午前中だけで睡眠外来の患者さんを98人診療できました。これほど多くの診察が可能になったのは、約半数の患者さんをCPAP装置の遠隔モニタリング機能を使って診察しているから。CPAP装置を使っている患者さんには、基本的に毎月診察を受けていただくことになっています。しかし使用に慣れている方については、実際に病院に来ていただくのは1カ月おき。2回に1回は医師が通信でデータを見て診察して、異常があれば連絡する形をとっています」(安達さん)

患者、医師双方にとっての利便性が上がり、治療機器としての性能も上がっているCPAP装置。しかし、あくまでも対症療法であるため、終わりが見えない治療への不安を抱える患者も少なくない。だからこそ安達医師を始めとする医療従事者たちは根本的な治療を目指している。

「CPAP装置も30年ほど前までは存在すらしていませんでしたが、今や小型化し、通信機能を備えるなど、非常に速いスピードで進化しています。そのうち大きな技術革新によって、もっと良いCPAP装置や、新たな治療法が現れる可能性もあります。僕自身も睡眠医療に携わる者として、そういったものが生み出せるように頑張っていきたい」(安達さん)

人は人生の3分の1を寝て過ごす。「快眠」を望まない人などいないだろう。眠りと向き合うことは、食事の管理やワークアウトと同じく、自らの健康と向き合うということでもある。質の高い眠りを得るにあたって、続々登場する新しい技術はその強力なサポートになる可能性を大いに秘めている。この先さらなる発展が見込まれるスリープテック。これからも注目して損はないだろう。

(取材・文/吉田大)

朝日新聞社

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