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HDDヘッド技術で体内を“透視”、心電図ならぬ「心磁図」実現へ - ITpro

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 NANDフラッシュメモリーを使ったSSD(Solid State Drive)の普及で大容量記憶装置の主役の座から追われつつあるHDD(Hard Disk Drive)の読み出しヘッドの技術が“新大陸”を発見した。医学や医療の分野である。これまで、主に電気、具体的には体表面の電位差を測っていた心電図や脳波計が、この読み出し磁気ヘッドの技術、具体的には「GMR」や「TMR」という技術を使う心磁図や脳磁計に置き換わり、心電図などよりはるかに詳細な生体情報を知ることができるようになる見通しが出てきた。これまで約10年間、開発が続けられてきたが、いよいよ実用化が見えてきたのである。2022年6月にはTDKが医療用途向けの「MRセンサー」(同社)を量産する計画だ。

†GMR(Giant MagnetoResistance)=巨大磁気抵抗(効果)。それぞれ約1nm厚の強磁性層と非強磁性層を交互に積層した多層膜の電気抵抗値が、外部磁場の有無で変化する現象。その変化率(MR比)は5~15%である。この効果の発見者は2007年のノーベル物理学賞を受賞した。

†TMR(Tunnel MagnetoResistance)=トンネル磁気抵抗(効果)。強磁性層の間に約1nm厚の薄い非磁性層を挟んだMagnetic Tunnel Junction(MTJ)素子が強磁性層の磁化の向きの変化で電気抵抗値を大きく変化させる現象。磁気抵抗効果を示す物質に外部磁界を加えたときの抵抗変化率であるMR比は当初20~25%程度だったが、現在は200~1000%超と非常に大きくなっている。2009年には東北大学の安藤康夫研究室が、室温でのMR比1056%のMTJ素子を開発した。HDDの磁気ヘッドとして使われていたGMRをほぼ置き換えたほか、MTJ素子をトランジスタと組み合わせて集積したメモリー(MRAM)も実用化されている。

電気では多くの情報が消失

 生体情報を知る上で、心電図に代表される電位差の計測と磁気の計測は何が違うのか。一言でいえば、磁気計測であれば診たい臓器や体組織の情報を、その周囲にある体組織にほとんど邪魔されずに直接知ることができる点だ(図1)。

図1 電気のセンサーと磁気センサーの違い

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図1 電気のセンサーと磁気センサーの違い

心電図など電位差を計測するセンサーと生体磁気センサーの測定する信号の違い(a)と、その 具体例として胎児の心拍を心電図と心磁図で測ろうとした場合の違い(b)を示した。電位差計測は 電極が多くてもそれらの平均値しか分からず、信号の向きや空間分布の情報は失われる。一方、 磁気センサーでは信号源の情報を服の上からでも直接計測できる。センサーを増やせば、信号 の向きや信号源の空間分布も分かる。(出所:(a)は日経クロステック、(b)はTDK)

 心臓を含む筋肉は、細胞に強い分極が起こり、それによってカルシウムイオンやナトリウムイオンが流れることで筋収縮を実現する。心電図の場合、その分極の変化や電流を体表面で電位差としてとらえることで心臓の動きを診ている。

 心電図の歴史は長く、十分な実績があるが、実は心臓の情報をすべて計測できているとはいえない。心臓と体表面の間にはさまざまな体組織があり、それが信号伝達の大きな障壁になっているからだ。電位差の変化があれば電波も生じるはずだが、分厚い体組織にほとんど吸収されてしまう。体表面で電位差は測れても、その信号が心臓のどこで生じたのか、あるいは分極や電流の向きといった情報は失われている。心電図計測の際、多くの電極を体につけても、それは受信信号を重ねてSNを高めるためで心臓中の信号源の空間分布などは知り得ない。

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October 21, 2021 at 03:00AM
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