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利府の電気機関車「東北の発展伝える遺産」 元技術者の岡さん、保存維持望む - 河北新報オンライン

 宮城県利府町の森郷児童遊園に展示されている電気機関車(EL)ED91形11号が解体の危機にある。町は劣化や危険性を理由に撤去する方針だ。70年近く前、JR仙山線で行われた交流電化試験で活躍し、唯一現存するELの価値について、当時、技術者として試験に当たった元三菱電機副社長の岡久雄さん(96)=仙台市青葉区=に聞いた。(聞き手は生活文化部・菊地弘志)

交流電化試験の試作機で唯一残されたED91=利府町

 -ELが造られた経緯は。
 「1954年に仙山線で始まった交流電化試験に使われた試作機4両のうちの1両です。東芝が56年に製造しました」
 「日立製作所が2両、三菱電機と東芝が1両ずつを手掛け、私は三菱の技術者として55年製造のED91形1号の開発に携わりました。4両はそれぞれ仕様が異なり、安全性や性能を確認する上で大変有効でした」
 -試験は成果を収め、57年9月、仙山線仙台-作並間で国内初となる交流電化の営業運転が実現します。
 「4両は引き続き、仙山線で最長12年ほど活躍しました。鉄道の電化は直流方式が早く普及しましたが、交流方式は変電所の数が少なくて済むなど経済性に優れています。トンネルの多い区間でも導入が可能で、東北線をはじめ、東北の幹線でも飛躍的に電化が進みました」
 「試験で得られた技術や知見は高速化にも貢献し、交流方式で64年10月1日に開業した東海道新幹線は、9日後の東京五輪開幕に間に合ったのです」
 -日本や東北にとって大きな前進だったのですね。
 「敗戦国の日本は、輸送力増強という大命題があり、それに応える歴史的な礎をつくることができたと思います。人の行き来や物流が活発になり、東北の経済発展につながったことをELが伝えてくれます」
 -利府町は解体する考えを示しています。
 「3両は既に姿を消し、最後に残された貴重な1両です。ELの保存維持が容易でないことは十分理解できますが、東北の暮らしを豊かにした貴重な産業遺産であり、鉄道にさほど興味のない人にも身近な存在になるはずです。科学技術とは、歴史に学び、先輩の功績を引き継いでこそ、進歩するものと考えます」

電気機関車の価値を説明する岡さん=仙台市青葉区の自宅

[おか・ひさお]東北大工学部卒。1952年三菱電機入社。常務、専務、副社長を務めた。92~95年新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)理事長。電気学会会長、レーザー学会会長も務めた。仙台市出身。

[メモ]ED91形11号は1975年、利府町が誘致し、蒸気機関車C58形と共にJR利府駅近くの森郷児童遊園に屋外展示された。車体は劣化が進み、コンデンサーに有害物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)が含まれている。機関車の解体撤去に関わる予算案が町議会6月定例会で可決され、町は年度内にも撤去する方針。町民ら有志でつくる「利府町機関車保存会」は5日、保存するよう再検討を求める陳情書を町に提出した。

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