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「テクノロジーの構造理解は、人材の『リスキリング』に繋がる」:Glossom 足立和久 ✕ JALペイメント・ポート 松尾拓哉 - DIGIDAY[日本版]

デジタル活用への注目度は、コロナ禍も相まって加速度的に高まっている。しかし、その場しのぎのツール導入や、テクノロジーの表層的な理解で終始しないよう、注意も必要だ。

JALグループとSBIグループが共同で立ち上げたフィンテック企業、JALペイメント・ポート。JALマイレージバンク機能が付いたトラベルプリペイドカード、「JAL Global WALLET」、銀行機能「JAL NEOBANK」を展開する同社は、2018年のサービス開始以来、デジタル活用のための技術的・組織的アセットの構築を、地道ながらも着実に進めてきた。その苦労がいま、実りはじめている。サービス開始前からマーケティング活動を明確に定義し、マーケティングデータベースの構築から行う事で統合型のマーケティング活動を展開。チームのデジタルリテラシーも向上している。

それを支えていたのが、グリー傘下のデジタルマーケティング専門家集団、Glossom(グロッサム)だ。同社は、グリーの広告事業部が分社化して生まれた企業で、自らBtoCビジネスを手がけていた経験や伴走型の支援を強みとしている。

「デジタル活用を効果的に行うには、テクノロジーの『構造』から理解することが非常に重要だ」。Glossom株式会社 代表取締役社長の足立和久氏はこう語る。一方、JALペイメント・ポート取締役 マーケティング部長の松尾拓哉氏も「どのような仕組みでそのテクノロジーが機能しているのか、その本質理解はリスキリング(reskilling:スキルの再開発)につながる。結果、チームのデジタルリテラシーが向上し、引いては企業全体の力量も増す」と述べる。

両氏の対談から、いま企業のデジタル活用に必要なポイントとは何かを探る。

◆ ◆ ◆

足立和久氏(以下、足立):松尾さんとはじめてご一緒したのは5年以上前。当時、まだJALさんに在籍されていたときでしたね。

松尾拓哉氏(以下、松尾):はい。当時のJALは経営破綻と再上場を経験し、あらためてマーケティングに力を入れていく方向に動き出していました。足立さんとは、そのときにはじめてご一緒しました。デジタルマーケティングの、基本的な考え方など、一からいろいろ教えていただいたのを覚えています。そのときの経験は、いまも間違いなく活きています。

足立:そうおっしゃっていただけて光栄です。その後、2017年にJALさんとSBIグループさんが、共同でJALペイメント・ポートさんを立ち上げ、松尾さんがそのマーケティング責任者に就任された。

松尾:そうですね。JALペイメント・ポートは、フィンテック事業を展開する企業です。現在は、JALマイレージバンク機能が付いたトラベルプリペイドカード「JAL Global WALLET」と銀行機能である「JAL NEOBANK」を展開しています。

「JAL Global WALLET」の会員は、銀行振込やクレジットカードで円をチャージして、15の通貨に両替することができます。また、フライトに加え、ショッピングはもちろん、両替するたびにマイルを貯めることも可能です。Glossomさんには現在、この「JAL Global WALLET」に関するマーケティング活動を、デジタル領域を中心にご支援いただいています。データベースの構築、運用から新規会員の獲得、および既存会員のアクティブ化まで多岐に渡ります。

本取り組みにおける、Glossomの担当領域

本取り組みにおける、Glossomの担当領域

足立:そのなかで、まず最初にご提案させていただいたのが、マーケティングデータベースの構築でした。

松尾:私の過去の経験に基づく課題認識として、マーケティング活動は複数の活動の集合体、例えば仮説導出のためのデータ分析や、クリエイティブの制作・PRのライティング、更に効果検証だったりと非常に多岐に渡るがゆえに、機能分化する傾向があると感じています。その結果、一貫性が担保できないことで効果が薄まりがちになり、またそもそも活動自体の効果があったのかなかったのかよく分からないということがありました。そこで一気通貫の施策実施とマーケティング活動というインプットとそれによるアウトプットを明確に紐づけることで、その結果をチーム全員が共通の目線で振り返り、PDCAを回せるような仕組み作りに挑戦しようと考えました。その第一歩として、まずはマーケティングデータベースの構築からスタートしました。マーケティングデータベースもカードの利用情報だけではなく、航空利用情報も組合せてより効果的なものにすることから始めました。

「大局を見る」ことが重要

足立:そうでしたね。ただ、蓋を開けてみると、データベースの活用がはじめから有効に機能したわけではありません。仮設と検証の反復によりデータの活用方法を見直し課題を克服していきました。現在は、クラウド上にリアルタイムで反映できる状態になっているので、パーソナライズされたコミュニケーションが可能です。

たとえば、プライベートで定期的にハワイへ旅行する人と、ビジネスで東南アジアに行く人がいるとしたら、その渡航情報と決済情報から、個々に最適化されたコミュニケーションを実現できます。

松尾:マーケティングデータベースのおかげで、あるコンテンツに接触した顧客のメール開封率、クリック率といった反応だけでなく、最終的な利用状況まで紐づけてみることが出来ます。そういった個々の施策に関する、質の高い提案とサポートはもちろんですが、Glossomさんは、いかに最適な価値を提供できるか、マーケティングデータベースを元に長い時間軸で分析してくれます。短期的な価値提供だけでなく、3〜5年間のLTV(Life time value)に基づいた提案をしてもらえるのは非常に助かっていますし、私たちも大局観を持つことができます。これは、マーケティング活動を行ううえで非常に重要です。

足立:ありがとうございます。弊社としても「売っておしまい」ではなく、長期的な視点に基づいた伴走型のご提案を心がけています。

松尾:私の過去の反省を踏まえても、どうしても「マーケティングツールの導入」がゴールになってしまうケースがあります。ただ基本的に、ビジネスはツールを導入しただけでは終わることはありません。私たちは別にツールが欲しいわけではなく、課題を解決して欲しい。もちろん、その課題解決をやりきるのは、事業会社側であるべきとも思っていますが、Glossomさんのような伴走者の存在は非常にありがたいと思っています。

加えて、Glossomさんにとっての顧客はJALペイメント・ポートなのですが、私たちにとっての顧客はエンドユーザーです。Glossomさんは、クライアントの事業の成功のために、一緒になってエンドユーザーについて理解しようとしてくれ、そこはやはり、自らBtoCビジネスを営んできた経験があるからだと思います。

 「マーケティングでは、大局を見ることが重要だ」と語る松尾氏

「マーケティングでは、大局を見ることが重要だ」と語る松尾氏

Glossom最大の強み

足立:私たちはもともと、母体であるグリーグループの広告事業部から生まれた企業です。グリーグループはBtoCビジネスを強みとしているので、そこで得た知見や経験をもとに、クライアントさまを支援することができる。デジタル活用支援を行う企業の多くは、デジタルの知見はあっても、BtoCビジネスを運営したことがないケースが多い。一方私たちは、「デジタル」と「BtoC向けのビジネス」の両方を熟知していると自負しています。

なので、クライアントさまにも、デジタルにおけるBtoCビジネスの定石を押さえた支援ができる。たとえば、一般的にデジタル決済を使っている方にはアーリーアダプターが多く、消費行動も偏りがあります。なので、全体を底上げするよりも、収益貢献している人が誰なのかを探したほうが、ビジネスにおけるレバレッジをかけやすかったりする。

松尾:なるほど。そういった視点は、まさに自らBtoCビジネスを手がけてき経験があってこそですね。

足立:はい。クライアントさまの取り組みに対して、エンドユーザーの視点に立って仮説立て、検証、そして施策をご提案する。これが、私たちがもっとも付加価値を発揮できるポイントかなと思っています。

そのために、私たちはご一緒させていただく企業さまの強みを、しっかり把握することを非常に重要視しています。強みを生かすうえで足りてない要素があったり、あるいは競合がそれを上回っている場合は、競合と比較しつつ状況を客観的に説明させていただきます。

 「BtoCビジネスに携わっていた経験が、Glossomの強みになっている」と足立氏

「BtoCビジネスに携わっていた経験が、Glossomの強みになっている」と足立氏

表層ではなく「構造」を理解する

松尾:加えて、Glossomさんの良い点は、テクノロジーの表層的な部分ではなく、構造からしっかりご説明していただける点です。特に、私たちのようなデジタルが主戦場ではない企業の担当者は、どのような仕組みでターゲティングができるのかなど、そもそもの部分を理解していないケースがあります。以前の私は、まさにそうでしたから。

足立:クライアントさまに応じてですが、「なぜデジタルマーケティングでは、ターゲティングができるのか」という、基本的な仕組みからお伝えするようにしています。「何ができるか」だけでなく、「なぜできるのか」という構造、本質を理解していただくことは大切ですから。

松尾:仕組みをブラックボックス化して、テクノロジーがもたらすメリットだけ伝えられると、事業会社も表層的な理解で終わってしまいます。私のチームメンバーも施策設計時にデジタルの仕組みを活用してどういった活動が出来るのか、どのように効果検証を行っていくのか、Glossomさんと議論を重ねながらすすめています。。これは、もちろん本人の力もありますが、スタート時点でテクノロジーの構造や本質を理解できたのが大きいと思っています。

足立:また、表層的な理解だけだと、支援側に丸投げしてしまう状態になりかねません。それでは、クライアントさまがプロジェクトを通じて身に付けられる知見や経験も半減してしまいます。

リスキリングの重要性

松尾:なるほど。変化の速い時代の中で自分のスキルを常に見直す学習棄却の重要性は益々増していると思いますが、足立さんとの出会いは私にとっての学習棄却であり、まさにリスキリングに繋がったと思っています。

さらには、Glossomさんから学んだ、長い時間軸での価値提供を重視する考え方などは、JAL本体での施策に活かすことが出来ると考えています。

足立:JALペイメント・ポートさんとの取り組みは、ハイブリッドな体制でのプロジェクト推進における、成功事例だと考えています。事業会社と支援側が双方に理解を深めることで、マーケティング施策のレベルをお互いに高度化できました。今後も、そのスキームを広げていきたいと思っています。

松尾:それは良いですね。足立さんのおっしゃるハイブリットな体制なら、結果的に企業のデジタルリテラシーも向上するでしょう。デジタル人材を新たに採用するだけでなく、人材をリスキリングするのは非常に効果的だと考えます。

これは、単純にデジタルに強くなることだけでなく、その人材の成長にも繋がります。新しい物事、それこそ新たなテクノロジーと直面したときにこそ、リスキリングが行われ線形だった成長度合いが指数関数的に上がると、個人的には考えています。

足立:現在さまざまな業界の企業が、デジタル人材不足を訴えています。そうした課題に対しても、少しでも貢献できるよう邁進していきたいと考えています。

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▼足立 和久(写真左) 
Glossom株式会社 代表取締役社長

楽天ほか、複数のインターネット事業会社を経て、現在、グリー株式会社 執行役員、Glossom株式会社 代表取締役として、グリーグループの広告・マーケティング事業領域を管掌。

▼松尾 拓哉(写真右) 
JALペイメント・ポート株式会社 取締役 マーケティング部長

2000年JAL入社。これまで事業計画、マーケティング・ブランディング戦略に従事。2017年9月よりJALグループとSBIグループで共同設立したJAL Payment Portでマーケティング責任者を務める。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(海達 亮弥)
Photo by 合田和弘

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