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加速するテクノロジーを活用した人材マネジメント(2020年7月28日)|BIGLOBEニュース - BIGLOBEニュース

本コンテンツは、2020年6月26日に全編オンラインで開催されたJBpress主催「Workstyle Innovation Forum 2020 夏>生産性を高め、イノベーションを創発する!“経営戦略”としてのワークスタイル変革」での講演内容を採録したものです。

慶應義塾大学大学院
経営管理研究科特任教授
岩本 隆 氏


人は付加価値の高い仕事に注力すべき

 本日は、HRテクノロジーを含めさまざまなX-Techビジネスを研究してきた私の観点から、テクノロジーを活用した人材マネジメントについて総括し、ウィズコロナ・アフターコロナを踏まえた直近の動向もご紹介します。

 2010年頃からさまざまなX-Techビジネスが成長しており、現在は第四次産業革命と言われるほどの大きな変革期にあります。今日のテーマと深く関係するHRTech(HRテクノロジー)も成長率が高い分野となっており、人材マネジメントにも大きな変化の兆候があります。

 日本における人材マネジメントは、製造業が中心であった時代には金太郎飴型とも言われるほど画一的なものでした。一方で、新しい産業が続々と誕生する現代においては、個を生かしつつ組織の生産性を高める人材マネジメントが不可欠になっています。

 こうした背景から、国内では2013年頃からHRテクノロジーを活用する取り組みが産学連携で進められており、2016年のHRテクノロジー大賞をきっかけに広く知られるようになっています。

 2017年には経済産業省がHRテクノロジーを普及させるための議論を開始。以降、同省では現在まで人材マネジメント研究会を毎年開催しており、単なる労働政策ではなく産業政策として人材政策を打ち出しています。

 経済産業省が最初に打ち出した人材政策は、人が目指すべき姿に関するものでした。付加価値の低い仕事はAIやロボットなどを活用して自動化し、人は付加価値の高い仕事に注力するべきというものです。実現するには従業員のテクノロジーリテラシーを高める必要があり、教育に関する政策的な支援も行っています。

 その後に打ち出したのは、これから求められる人材マネジメントに関する政策です。経営戦略においては、即応性と中長期の視点を両立する必要性が高まっています。

 これに対応するには、人材に詳しい経営者であるCHRO(Chief Human Resource Officer)を置き、経営戦略と連動した人材戦略を実行する必要があるとしました。経済産業省では現在、人材育成などのHRデータの活用を促進する取り組みにも力を入れています。


世界的にHRレポートのニーズ高まる

 経済産業省で検討中の産業人材政策もあります。機関投資家などの要望を受け、財務諸表に載らない人材力を対外的に説明するための手法を検討するというものです。投資家は財務諸表を見て投資をします。

 しかし、製造業が主流でなくなった今、設備や現金の状況を分析しても成長性が判断できない企業が増えています。新たな判断材料として、経営陣による人材戦略や人材戦略に関する取締役会の役割などを明確にするニーズが高まっています。人材戦略がより明確になると、従業員・労働市場と企業との関係が改善するメリットもあります。

 一方、欧米には人材マネジメントの国際標準化に向けた動きがあります。一連の議論で最も話題になっているのは、2018年にISOが公表した文書番号ISO30414です。

 この文書では、企業の人材力を定量的に整理して投資家に公表するヒューマンキャピタルレポーティングの作成についてまとめています。すでにSEC(米国証券取引委員会)も関心を示しており、将来的に上場企業はHRレポートの公表が義務化される可能性が出てきています。

 国内の話に戻ると、直近では経済産業省の政策に限らず、政治的な関心も高まっています。2019年6月からは「中小企業の生産性革命を実現するための人事評価制度等の在り方を考える有志議員勉強会」が行われ、12月には政調会長、経済産業大臣、厚生労働大臣に対し、人事評価制度の必須化やそれを実現するためのHRテクノロジーの導入に関する助成金を求める提言を申し入れています。5月には勉強会から発展した議員連盟も設立されました。

 自民党女性局でも2019年12月から「テレワーク勉強会」が行われ、コロナウイルスの流行を受けて一気に議論が進みました。具体的には霞ヶ関の働き方改革に関する提言で、「トップダウン+ボトムアップ」という双方向で「意識・風土」「環境・ツール」「制度・ツール」を三位一体で改革すべきという内容になっています。


早急にCHROを設置しHRデータの整備と活用を進めるべき

 こうした状況を踏まえ、企業が人材マネジメントにおいて取るべき具体策をご紹介します。

 すでに欧米の先進的な企業ではCHROを置き、CFO、CEOと連携するG3(Group of 3)の体制で、経営会議とは別の議論を行う体制となっています。G3では、自社のビジネスに関する課題を縦軸、組織・人材に関する課題を横軸として議論します。

 この議論に、ISO30414のような形で整理したデータを用いるわけです。G3のような体制が整うと、かつてならCFOから上がってくるデータのみで自社の状況を判断していたのに対し、別の尺度が加わることになります。日本でも早急にCHROをアサインし、体制を整備するべきです。

 現場で参考になりそうなHRデータの活用例もご紹介します。まず、画像や音声など構造化されていないものを含め、あらゆるデータを放り込んだHRデータレイクをベースとします。

 これを活用し、人事部の中に設置するピープルアナリティクス部門で、データサイエンティストが分析ツールを整備するという体制です。

 この体制下では、ビジネス部門は、HRデータレイクに直接アクセスして人事に関する課題にアクションできる他、部門内で解決できない課題があれば、ピープルアナリティクス部門に分析を依頼することもできるようになります。

 ここまでお伝えしてきたとおり、今後、人材マネジメントにおいてテクノロジーの活用が進むのは間違いありません。一方で、テクノロジーはあくまでツールであり、目的を見失わないようにすることも重要です。

 また、日本でも財務諸表とは別のHRレポートの作成が求められる可能性が出てきています。これらの変化に対応するに当たり、企業はCHROを配置して体制整備を進めることが、今後の人材マネジメントにおいて重要になっています。

筆者:JBpress

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