当時から感じていたが坂本龍一がディレクションする中谷美紀の楽曲は、どこか不穏で、どこか傷だらけ。透き通っていながらも心を置いてきたロボットのような印象すらある。田中ヤスタカによるPerfumeのエフェクトをかけたボーカルや、ボーカロイド的な冷たさ（Perfumeが冷たい、と言っているわけではありません）。
中谷美紀が持つ演技力や情緒的なマインド、物事へのこだわり。そんな表現者として「たぎる情熱」を封印し、アンドロイドのようにあえて空っぽに演じる。美しい旋律やメロディ、売野雅勇や松本隆による空白/高密度な歌詞が、“器”となった中谷美紀がすべて受け入れる。“ポップ”という枠の中でポップスを超える美しいアートを描くような……。
今、楽曲たちを聴き直している中で、ふたたび感動している。本当に美しく、かっこいい。勝手に想像するに、中谷美紀の強く誠実なリスペクトがあったからこそ、この絶妙で神がかったスタイルが出来上がったのではないだろうか。モノトーンの先にある色鮮やかな景色。それを何度も味わいたくなるのである。
加えて、グラフィックデザイナーの故・中島英樹がアートワーク手がけたアルバム『私生活』（1999）や『Cure』（1997）は、そのCDの存在自体がエターナル。坂本龍一の音楽とも組み合わさり、これらのアルバムは“俳優による音楽”の金字塔と呼べるかもしれない。
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April 03, 2023 at 05:30PM
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坂本龍一と中谷美紀が奏でた音楽。“知性あるアンドロイド”、その普遍性を探る（Toru Mitani） - VOGUE JAPAN
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