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アクセンチュアとヴイエムウェアは2021年2月、パートナーシップを拡大して専用の事業グループ「Accenture VMware Business Group(AVBG)」を立ち上げると発表した。アクセンチュアのグローバルな知見とヴイエムウェアの最先端テクノロジーを組み合わせて、顧客企業のビジネス変革を支援することが大きな狙いだ。提携に込めた思いや戦略をアクセンチュアの関戸亮司副社長とヴイエムウェアの山中直社長に話を聞いた。
聞き手は、日経BP 総合研究所 フェローの桔梗原富夫が務めた。
コスト削減から経営革新のためのDXへ
――日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の状況をどのように評価していますか。
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アクセンチュア株式会社
代表取締役副社長
テクノロジー コンサルティング本部
日本・中国・アジア太平洋・アフリカ・中東地区 統括本部長
関戸 亮司 氏
関戸 日本企業はDXに出遅れていると言われていましたが、ここ数年の加速は目覚ましいものがあります。「スピード感を持ってやっていこう」という企業が圧倒的に増えていますね。これまではコスト削減が重視されていましたが、昨年あたりからAI(人工知能)や機械学習など、オンプレミスのシステムでは利用が難しかったテクノロジーを活用することで、ビジネスの高度化を目指す企業が多くなってきたように思います。
山中 確かに「効率化のためのデジタル化」から「経営革新のためのデジタル化」へと移りつつあると感じます。ただし、ビジネス変革としてのDXは、これまでのシステムを捨てて全く新しいものに置き換えるわけではありません。既存システムと最新テクノロジーを駆使した新システムを両立させることが重要です。
新旧のシステムを両立させる
マルチクラウド環境が必要に
――どのように顧客企業のDXを支援していくのでしょう。
関戸 DXには「業務DX」と「事業DX」の2種類があると考えています。前者は、デジタル技術で既存の業務を変革する取り組みです。業務を効率化したり、顧客体験を向上させたり、需要予測の精度を上げたりするDXです。一方の事業DXは新しいテクノロジー、具体的には最新機能を備えたクラウドサービスを組み合わせて、コスト構造を大きく変えたり、全く新しいサービスを創出したりすることで事業自体を変革するようなDXです。
日本企業が進めているDXの大半は業務DXで、事業DXはこれから重要なテーマになります。企業理念・目的に立ち返って、第2の創業と位置付けて考えることが必要でしょう。私たちは、ここを支援していきたいと考えています。
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ヴイエムウェア株式会社
代表取締役社長
山中 直 氏
山中 2つの方向性があると思っています。1つは、レガシーシステムをモダナイゼーションすることによって、古いシステムとクラウドネイティブのような新しいシステムが両立する共通プラットフォームを構築することです。コンテナ技術(サーバーではなくアプリケーションを仮想化する技術)を企業規模で構築、運用できるKubernetesを活用した「VMware Tanzu」を使えば、これを効率的に実現できます。
もう1つが、新しいアプリケーションの開発に向けてピープル(人材)やプロセスを変革することです。これを実現するのが「VMware Tanzu Labs」です。このラボでは、クラウド・ネイティブ・アプリケーションをアジャイルで開発する手法やチーム作りなどの方法論をお客様に学んでいただくなど、お客様自身のアプリケーション開発力を強化するためのサービスを提供しています。
関戸 これまでのように、1つのプロジェクトに3~4年かけるような時代は終わりになるでしょう。継続的にイノベーションを打ち出せなければ競争力が落ちてしまうからです。これを実現できるような環境を構築することが、これからの時代には競争優位性の源泉となります。そのためのテクノロジー基盤がヴイエムウェアのソリューションだと考えています。
――新たなシステムを構築する際に、システム基盤としてクラウドを選ぶことが当たり前になった今では、クラウドサービス事業者にロックインされてしまうことを危惧する企業も少なくありません。
山中 それぞれのクラウド事業者が、他社にはない独自の優れたテクノロジーを持っています。こうしたテクノロジーを使い分けられるようなマルチクラウド環境を構築することが解決策になります。ベスト・オブ・ブリードで自社に最適なテクノロジーを選定して、これらを統合的にコントロールできるような環境を作るべきです。これを支援することも、AVBGの重要な役割です。
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「2025年の崖」を克服するためには
何が必要か?
――経済産業省が「DXレポート」で提唱した「2025年の崖」では、レガシーシステムの存在が問題視されています。2025年の崖を克服するには、どうすればよいのでしょうか。
山中 日本企業の多くが、ブラックボックス化したレガシーシステムを見て見ぬ振りをしてきたのが現実だと思います。しかし、この2~3年で多くのCIO(最高情報責任者)から「そろそろ何とかしないといけない」という声を聞くようになりました。
このためにはレガシーアプリケーションのモダナイゼーションが必要なのですが、簡単なことではないので、深刻な経営課題になる恐れがあります。私たちは、コンテナ技術を活用したプラットフォームが、この解決策になるのではないかと考えています。ビジネスファンクション単位で部品化して、必要なところだけモダナイズするのが現実解となるでしょう。
関戸 アクセンチュアでもレガシーアプリケーションのモダナイゼーションが、この1年で最も多い案件でした。レガシーアプリケーションを全面的に見直し、クラウドネイティブなアプリケーションにゼロから作り直すアプローチもありますが、これだと時間もかかるし、リスクも大きくなります。
まずは既存のアプリケーションをオンプレミスからクラウドへ、そのまま引っ越すリホストを行って、後で“化粧直し”すればコストもリスクも抑えられるでしょう。リホスト後にコードコンバージョンでCOBOLをJavaに変換するといったアプローチです。最終的にはクラウドネイティブを目指すのですが、そのためにはコンテナ上でマイクロサービスを動かせるような環境を構築しておくことが重要です。AVBGは、このような環境作りも支援していきます。
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――今後は、コンテナが主流になってくるのでしょうか。
山中 先日、20人くらいのCIOとミーティングする機会がありました。そこで「既存のアプリケーションをどうされますか?」というアンケートをとったところ、コンテナに移行しクラウドで実行するという回答が1位でした。
コンテナ環境への移行の増加に伴って、Kubernetesの普及も加速しています。開発者はアプリケーションの開発に専念でき、運用者は実行基盤を柔軟に運用できるため、デジタルサービスを構築・運用する上でコンテナおよびVMware Tanzuをご利用いただく意義がますます高まるのではないでしょうか。
日本企業に伴走していくことが
大きな使命
――AVBGはグローバルな取り組みですが、日本ではどのようなところに注力していきますか。
関戸 私は、これまで日本経済を支えてきた製造業に危機感を持っています。製品やサービス、ビジネスプロセスのデジタル化が進んでいくと、すべての企業がデジタルカンパニーになります。これは、ソフトウェアとデータの価値が今よりも飛躍的に高くなることを意味します。
ソフトウェアとデータに強みを持つ企業は、これを製品から切り離して単独で販売することも考えられます。例えば、海外の大手電気自動車メーカーが自動車を作らずに自社開発したソフトウェアを販売することもあるかもしれません。こうなると、日本の自動車メーカーが、そのソフトウェアを自社製品に組み込むといった可能性も否定できません。こうした動きが広がると、製造業としての付加価値が小さくなってしまいます。私たちは、日本企業のデジタルカンパニー化に貢献していきたいと考えています。
山中 お客様がビジネスに集中できるような環境をアクセンチュアさんと一緒につくっていきたいですね。テクノロジーがビジネスをリードする世界に向けて、日本企業に伴走していくことがAVBGの大きな使命です。
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