衆院選では与野党が公約に科学振興策を掲げた。国や経済界が「役に立つ」研究を重視する傾向が強まり、応用や実用化にすぐには結び付かない基礎研究が弱体化したと指摘されて久しい。国際的に影響力のある論文も減少している。東北の研究者たちは「科学技術立国」の行方に危機感を募らせる。
減った教員定数
「いつ、どんな成果が出るのか分からないのが科学の本質。このままでは日本のノーベル賞はゼロになる」。国立天文台水沢VLBI観測所(奥州市)の本間希樹(まれき)所長(50)が憂いを深める。
日本代表を務める国際チームが2019年4月、初めてブラックホールの輪郭の撮影に成功したと発表し「ノーベル賞級」と称賛された。本間さんが水沢観測所で天文研究に携わって20年目、地道な取り組みが実を結んだ瞬間だった。
今世紀のノーベル賞は、研究開始から受賞まで平均25年以上を要している。腰を据えて研究に打ち込める環境の重要性は明白だが、現状は厳しさを増す。
国は04年度、基礎研究を担う国立大を法人化。運営費交付金を段階的に絞り、これまでに1400億円以上減額した。地方の小規模な国立大ほど財政難に陥り、教員定数に加えて研究予算の削減を迫られた。
代わりに、研究者は科学研究費補助金(科研費)など「競争的資金」の獲得に奔走するが、弊害も大きい。申請書や報告書の作成など事務作業に忙殺され、研究時間が奪われる。研究期間は3~5年と定められ、長くはない。東北大の理系教授は「科研費を取らなければ研究ができないが、短期間で結果が出るテーマや手法で、狙わざるを得ない」と嘆く。
増えるポスドク
若手研究者を巡る状況も危機的だ。国立大の定数減により、任期付きで雇用される研究職「ポスドク(ポストドクター)」が増加。不安定な身分を嫌う大学院生の博士課程への進学率は低下している。
21年版の科学技術白書によると、日本は研究力の指標となる注目度の高い論文数は9位で、20年前の世界4位から順位を落とした。18年の大学の研究開発費は00年比0・9倍の日本に対し、米国2・5倍、中国19・0倍、韓国4・5倍と他国は高い伸びを示す。
ブラックホール研究の快挙に沸いた翌20年度、水沢観測所は危機に陥った。予算が減少傾向にある国立天文台(東京)の内部で配分が見直された結果、国内4カ所の電波望遠鏡の運用停止が取り沙汰された。
最終的に全て存続が決まったが、03年から続けてきた銀河系の立体地図作りは前倒しで終了。水沢観測所はポスドク1人を含む職員7人が退職してから人員補充はない。
国はポスドクの支援に乗り出す半面、14年度からの5年間で1580億円を投じた「戦略的イノベーション創造プログラム」など、短期間で実用的な成果を狙う分野への予算の「選択と集中」を強力に推進する。
その意義を理解しつつ、本間さんは研究の多様性が失われることに懸念を強める。「いつか花開く基礎研究を切り捨てれば、革新的なアイデアは生まれなくなる。日本が今後も科学技術立国として国際社会で役割を果たすには10年後、20年後を見越した投資も必要ではないか」
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October 31, 2021 at 04:00AM
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