今回は芸能の道具に関する大事な「制度」のお話。
「人間国宝」という言葉はよく知られていますよね。これは、重要無形文化財の指定制度および保持者等の認定制度によって選ばれた「各個認定保持者」の俗称。能楽や歌舞伎などの芸能の演者や染織、陶芸などの工芸の作家が選ばれる。発表は毎年七月。新聞やテレビでも大きく報じられるが、このとき「選定保存技術」の発表も行われているのをご存じだろうか。
「選定保存技術」は、文化財を保存・継承するために欠くことのできない技術を選定し、技術者個人(保持者)や団体を認定する制度。たとえば有形文化財だと、建造物や美術工芸などを保存するための左官や漆工品修理の技術がこれにあたる。
そして、能楽や歌舞伎などの無形文化財を支える技、つまり芸能の道具に関する技も含まれる。これまでに、能装束製作の保持者、歌舞伎鬘(かつら)製作の保持者らが選定されている。
私はこの発表を毎年楽しみにしている。今年は三味線の棹(さお)、胴の製作や箏の製作技術が選定されて、手をたたいて喜んだ。どんな狙いがあったのか。文化庁文化財第一課の芸能部門で、文化財調査官をしている吉田純子さんに話を聞いた。
三味線といえば、コロナ禍による三味線メーカー大手の東京和楽器(東京都八王子市)の経営危機が昨年、メディアで報じられたが、吉田さんは「私たちも大きな危機感を抱きました。三味線や箏は邦楽器の中心を占めるものなので、以前から調査を進めていましたが、それを加速させました。選定されると重要な技であるという根拠になり、支援もしやすくなります」。
いつもは目立たない職人さんに光を当てる意義も大きい。昨年、保持者に選ばれた歌舞伎鬘製作の川口清次さんは「こういう仕事があるということを社会に知ってもらえたことも、ありがたかった」と語る。
しかし、まだまだ「選定保存技術」の認知度は低い。吉田さんは「こうした技がないと、芸能は未来に継承できない。もっと関心を寄せてほしい」と言う。
そこでちょっと考えてみた。川口さんのような選定保存技術の保持者に「職人の人間国宝」という愛称をつけてみるのはどうだろうか。演者や演奏家のために、ひたむきに技を磨き進化させる職人がいるからこそ、芸は輝く。まさに宝だと思う。 (伝統芸能の道具ラボ主宰)
◆選定保存技術とは
文化財保護法に定められている制度で、日本固有の文化財を後世に伝えていくことを目的とする。1975年12月から運用開始。文化財の保存に欠くことができない伝統的な修理技術、材料や道具等の製作技術などを選定する。本年度の選定で、選定保存技術90件、保持者58人、保存団体41(重複認定があるため実団体数は35)団体となる。選定されると後継者育成や技術錬磨などに公的支援が受けられるようになる。「文化庁 選定保存技術」で検索すると、公式パンフレットのPDF版が閲覧可。
◆展覧会情報
<文化庁日本の技体験フェア> 選定保存技術・保存団体の技や活動を紹介するパネルや原材料・道具等の展示、実演などが行われる。
十一月二十、二十一日。東京都千代田区のベルサール秋葉原で。新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で開催予定。
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September 10, 2021 at 05:28AM
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