コロナ禍で企業が成長を続けるために不可欠なもの
アクセンチュアの最新調査によると、新型コロナウイルスの感染が続く中においてもイノベーションに向けてテクノロジー投資を拡大した企業は、同業他社よりも大幅な収益成長率を示していることが分かった。
最新調査レポート「Make the Leap, Take the Lead」によると、クラウドや人工知能(AI)などテクノロジーへの投資を先行して拡大した企業(以下、先行企業)は、投資に出遅れた企業(以下、出遅れ企業)の5倍の収益成長率を実現している。
わずか数年前の調査で、この差は2倍に留まっていた。先行企業とは対照的に、出遅れ企業の多くはコロナ禍において事業継続を主な目的として、最近になって新たなテクノロジーへの投資を開始したが、先行企業との差はさらに広がっている。
本調査において、先行企業を猛追する「跳躍企業」という新たなカテゴリーの存在も明らかになった。
全調査対象の18%を占める跳躍企業は、システム強化とイノベーション推進のバランスを迅速に調整する能力に長けており、過去1年間の困難な局面をビジネスチャンスや競争優位へと変えるためのテクノロジー戦略を積極的に実行することで、短期間でデジタルトランスフォーメーションを成し遂げている。
アクセンチュアは、本調査レポートの作成にあたり、25カ国4,300人(日本は200人)の企業経営層およびIT担当幹部に実施した調査に基づき、システム強度、ならびにIT予算のうちイノベーションに向けられた投資額に関して企業のスコアを算出した。
スコアの上位10%を「先行企業」、下位25%を「出遅れ企業」、残り65%のうち、システム強度を維持しながらIT予算を大幅にイノベーションに振り向けた18%を「跳躍企業」と定義した上で、それぞれのカテゴリーの財務実績を分析した。
アクセンチュア テクノロジーのインテグレイテッドグローバルサービスを統括するラムナス・ヴェンカタラマン氏(Ramnath Venkataraman)は、次のように述べている。
「アクセンチュアは本調査で、テクノロジーの導入や活用度合い、テクノロジーイノベーションを受け入れる組織的・文化的な許容度といった、企業の『システム強度』を評価しました。先行企業は、高いシステム強度に加え、IT予算を積極的にイノベーションに振り向ける『投資先の転換』を図ることで、出遅れ企業よりも圧倒的な成長を遂げています。一方、跳躍企業は、システム強度を維持しながら全社的にイノベーションを推進することで、目覚ましい成長を遂げており、現在、出遅れ企業の4倍の収益成長率を実現しています」
アクセンチュア ストラテジー&コンサルティング担当グループ・チーフ・エグゼクティブを務めるアネット・リッパート氏(Annette Rippert)は、次のように述べている。
「今回の調査により、先行企業は、同業他社よりも早期にテクノロジーを取り入れ、積極的な投資を行っていることが明らかになりました。また、新たなテクノロジーの導入だけでなく、俊敏性を備えた新たな働き方や、イノベーションを生むための組織風土改革、従業員のアップスキリング(スキル向上)など、全社的なテクノロジー活用のために不可欠となる取り組みにも注力しています。こうした一つひとつの取り組みが、利害関係者に対する持続可能な価値の創出につながっています」
また、本調査レポートでは、テクノロジー戦略を通じてさらなる成長を遂げるために重要となる3つのステップを紹介している。
プラットフォーム再構築(Replatform)
ITシステムの処理能力や柔軟性を維持しながらシステム強度を高め、テクノロジーの冗長性やデータのサイロ化を削減するためには、クラウドへの移行が欠かせない。
例えば、跳躍企業の80%は、2017年までに何らかのクラウド技術を導入しているが、2020年にはその割合が98%にまで増加した。
戦略の再考(Reframe)
イノベーションを中心に据えてテクノロジー戦略を見直すことが重要性を増している。跳躍企業の強みは、従来の考え方から脱却し、景気低迷の状況を新しいテクノロジーによってイノベーションを起こす機会と捉えていることにある。
また、コロナ禍においてもイノベーションの強化を最優先事項に掲げており、跳躍企業の67%が、非中核事業の収益増に取り組んでいる。
広範な価値創出(Reach)
社内のテクノロジー利用環境を広げ、従業員一人ひとりに合わせたアップスキリング、ウェルビーイング(主観的幸福)、メンタルヘルスへの対応を強化することで、より幅広い価値の創出に取り組むことが重要だ。
先行企業の65%は、従業員の幸福度を重視して、デジタルを活用した柔軟な働き方を実現している一方で、出遅れ企業では43%に留まっている。
先行企業の70%以上は、クラウド向けセキュリティへの投資を強化しているほか、68%がハイブリッドクラウドへの投資を強化している。
また、先行企業は「IoT」(70%)や「AIおよび機械学習」(59%)への投資も拡大。企業は、クラウド基盤を整備することでコスト削減を図り、IT予算の用途を維持管理からイノベーション創出へと転換することが可能になる。
こうした取り組みは、経営目標と整合したテクノロジー戦略を策定し、すべての利害関係者に価値を創出するための核となるものだ。
跳躍企業は、新興テクノロジーの活用範囲を以前より17%増やし、全社的にテクノロジーを取り入れることで、テクノロジー戦略の変革や優先事項の見直しを短期間で推進した。
また、さらなるテクノロジー活用に向けて組織改革を行ったことで、数年分の変革をわずか数カ月で成し遂げている。
構成/ino.
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