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学んだ技術 人生の財産 : New門@滋賀 : 企画・連載 : 滋賀 : 地域 - 読売新聞

 ごつごつした肌、裂けそうな口、立ち上がる尻尾――。陶器とは思えないゴジラを作ったのは、山村昇理さん(18)。甲賀市信楽町の県立信楽高総合学科セラミック系列で学ぶ3年生だ。「 釉薬ゆうやく で、もう少し紫色が濃く出ると良かったけど……。半端にしたくないので頑張った」

 中学生の時に見た映画でゴジラが大好きに。1学期の授業でタヌキの置物を作るはずが、ひとり脱線し、早朝や放課後などに手びねりで成形していった。歯や爪の細部にもこだわり、スプレーで釉薬を吹き付け、1230度の電気窯で約16時間焼成。高さ約40センチ、重さ約15キロの〈怪獣〉が生気を帯びた。

 信楽町内で陶器店を営む家で育った。今年の大津市美術展覧会では琵琶湖をイメージして青く仕上げた大皿が佳作に。正統派としての腕もあるが、「陶芸は趣味かな。農業がしたくて家の畑で野菜を育てている。専門知識を身につけ、高級フルーツも作りたい」と屈託がない。

 同高は1948年創立。かつては信楽工業高の名で窯業科とデザイン科を持ち、窯業の後継者を数多く育てた。82年に現校名になり、バブル経済の崩壊後、地場産業に徐々に陰りが見え始めると、家業のためばかりではなく、陶芸そのものに興味を抱いて入学する生徒が増えた。2014年度には県内で唯一、陶芸とデザインを学ぶ生徒を全国募集する「アート留学」を始め、現在は12人が学ぶ。

 兵庫県西宮市出身の2年、植盛優菜さん(16)もその一人。陶芸をしたくて入学し、町内の寮に一人で暮らす。「静かで制作には最高の環境。でも、仕事にするには厳しそう。普通に就職するかな」とつぶやく。

 「職人になるにはもっと勉強が必要で道のりは遠い。『粘土やろくろって面白い』と陶芸に興味を持ってもらえればいい」と、卒業生で同校の技術員、 洞勇同ほらはやと さん(33)は話す。体で覚えた技術は簡単に消えず、人生の財産になるはずだから、と。(おわり)

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July 23, 2021 at 03:00AM
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