熊本県南阿蘇村に7日開通した新阿蘇大橋は、熊本地震で崩落した旧大橋から約600メートル下流の渓谷に架かり、村の中心部方面と立野側の国道57号をほぼ直線でつなぐ。全長525メートルは旧大橋(206メートル)の約2・5倍。地震の教訓を生かして揺れに強く、揺れを逃すための工夫が施されており、国土交通省は「熊本地震級でも壊滅的なダメージは避けられる」と強調する。
新大橋は、黒川から約100メートルの高さにある長さ345メートルの本体部と、国道57号からの180メートルのアプローチ部の大きく二つに分かれる。
本体部は、複数の橋脚と上部の橋桁を一体化させた造りで、ドイツ語の「骨組み」に由来して「ラーメン橋」構造と呼ばれる。両岸の2点で支えるアーチ構造に橋桁を載せた旧大橋に比べ、揺れに強いのが特徴だ。
実際、新大橋のやや下流にある同じラーメン橋の阿蘇長陽大橋(276メートル)は、熊本地震でも本体部が崩れず残った。そのため地震後1年4カ月という早い段階で応急復旧が完了し、阿蘇地域復興の大きな支えとなった。
新大橋はアプローチ部にも工夫がある。
直下に活断層があると推定されるため、橋桁を65メートルと115メートルの二つの部分に分けた。活断層直上の65メートルの橋桁は、橋脚との接合部の強度をあえて弱め、強い地震が起きれば橋桁がずれて、揺れの力を逃がす仕組みだ。
T字形をした橋脚の上部構造も、通常より幅を広げて橋桁が落ちにくくした。仮に橋桁が落ちた場合も、65メートルのアプローチ部だけに被害がとどまるため、新大橋全体では早期の復旧が可能という。
建設においても、作業用の足場とコンクリートの型枠が一体化した状態で橋脚を造る「オートクライミングシステム」や、「超大型移動作業車」を使って橋桁を伸ばすように造るなど最新の工法を採用。国交省熊本復興事務所の藤川真一・工務第二課長は「こうした工法がなければ、開通は来年の夏前まで1年4カ月ほど伸びた可能性がある」と話す。
地盤防災学の専門家として新大橋の工事に助言した北園芳人・熊本大名誉教授は「現在考え得る最善の技術を取り入れた。新大橋の開通が阿蘇地域の経済的な復興につながってほしい」と期待する。(太路秀紀)
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March 08, 2021 at 09:00AM
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