習氏、中国テクノロジー革命で欧米依存脱却目指す－全人代が５日開幕 - ブルームバーグ

米政界にとっては最先端技術を支配し得る中国の潜在力が今後数十年間で最大の地政学的脅威の１つだ。一方、習近平国家主席も米国による中国の台頭阻止を懸念しており、５日に開幕する全国人民代表大会（全人代、国会に相当）では中国の自立強化に向けた計画が明らかになる見通しだ。

　　共産党指導部は全人代でコンピューター用半導体など主要部品の欧米依存低減に向けた今後５年の青写真を採択しつつ、水素車やバイオテクノロジーなど新技術を有望と位置付ける見込み。巨額の資金を動かすこうした取り組みは中国が2030年までに米国を抜いて世界一の経済大国となり、超大国に転換させるという習氏の目標も固めるきっかけとなる可能性がある。

CHINA-GUIYANG-XI JINPING-INSPECTION (CN) — 貴州省貴陽を訪れた習近平国家主席（２月４日）

写真家：Ding Haitao / Xinhua / Getty Images

　　世界的に生活水準を引き上げてきた統合の時代を経て、米中の対立は最先端技術の開発競争によって激しくなっている。双方とも戦略的分野での自足を目指しており、繁栄には言論の自由や民主主義が不可欠と考える体制と、経済成長を実現するため個人の自由よりも一党支配を重視するシステムとの間で、一方の政治体制の転換を望んでいるのではないかとの疑念が互いを突き動かしている。

　　習氏にとって、これは政治的反対の事実上の禁止を共産党が正当化する根拠となってきた14億人の国民生活の改善という問題にとどまらない。トランプ前米政権が共産党統治の正当性を損ねようとしたり、華為技術（ファーウェイ）や半導体受託生産を手掛ける中芯国際集成電路製造（ＳＭＩＣ）など国内大手を圧迫しようとしたりした後だけに、共産党が経済をうまく導くことができると示したい局面でもある。

　　新型コロナウイルスの感染拡大を早期に抑え込んだ中国は、自国の政治システムに自信を深めている。エコノミストの予測では中国の今年の国内総生産（ＧＤＰ）は8.3％増が見込まれている。一方、米国の見通しは4.1％増だ。習主席も昨年、「コロナの流行は中国の特色ある社会主義の優位性をあらためて示した」と自賛した。

　　だが、米国は主要テクノロジーへの中国のアクセス拒否や戦略物資の独自供給強化で同盟国と共に習氏の野心を阻もうとしている。

President Biden Signs Executive Order On Economy — 大統領令署名前に半導体を見せるバイデン米大統領（２月24日）

　　世界の投資家は今回の全人代を注視している。李克強首相は５日の政府活動報告で、今後１年の経済運営に関する計画を示す。昨年に続いて公式のＧＤＰ成長率目標を見送ったとしても、消費喚起に向けた新たな措置などは打ち出される可能性がある。

　　恐らくさらに重要なのは、全人代が現時点で国内生産できない半導体製造装置や携帯電話の基本ソフト（ＯＳ）、航空機設計ソフトなど30余りの技術を開発する中長期的な計画の詳細も明らかにする見込みである点だ。

China Science Spend Trails U.S.

Gross domestic spending on R&D as % of GDP

OECD, Eurostat, China Statistics Bureau, Statistics Bureau of Japan, Statistics Korea

　　経済成長率の下支えに向けて不動産投資やインフラに資金を回してきた中国モデルの効率性は下がっており、テクノロジー重視はより差し迫った問題だ。都市化の減速で住宅販売が頭打ちとなり、地方政府も有望なインフラ事業を見つけにくくなっており、2035年までに20年比で中国経済の規模を２倍にする目標の達成には生産性向上に向けた技術の活用が欠かせない。

Strategic industry

Number of innovative pharmaceutical drugs starting development in China, by company type

Source: McKinsey & Company

　　中国が苦戦を余儀なくされている主な分野が半導体製造だ。国内大手でさえ世界のライバル企業に少なくとも５年は後れを取っている。新５カ年計画では半導体向け資金支援の強化が盛り込まれ、かつての原爆能力構築に匹敵するような高い優先度で同セクターを扱う構えだとブルームバーグは昨年９月に報じた。

　　だが、これがうまくいく保証はない。国家主導の積極投資は中国経済を不安定化させる不良債権をもたらす恐れがある。昨年は半導体生産への投資が実を結ばなかった国有の紫光集団が25億ドル（約2670億円）相当の債務でデフォルト（債務不履行）を起こし、金融市場を揺るがしており、そのようなリスクの一端が既に浮上している。