ハイブリッドITとエッジコンピューティングが企業のストレージ要件を形成している。以前はオンプレミスのデータセンターにストレージを集約することが可能だったが、現在の標準は分散型ストレージだ。エッジで生成されるデータの増加に伴い、ストレージ技術が進化している。AI(人工知能)やデータ分析などとの融合も相まって、技術の急増と物理的な特性のバランスを取る必要に迫られる。
こうした状況を背景に、当然のように効率が求められる。Lenovoでアジア太平洋地域のデータセンターグループのシニアプロダクトマネジャーを務めるカシシュ・カルニック氏によると、ストレージベンダーは重点を効率性に絞って新たなハードウェアを検討しているという。
そこで必要になるのがデータを管理、移動、圧縮するソフトウェアだ。「ストレージベンダーは、データ管理に関連する設計、エンジニアリング、イノベーションの速度を上げている」と話すのは、IDCのアジア太平洋地域でエンタープライズコンピューティング部門のバイスプレジデントを務めるラジニッシュ・アローラ氏だ。
「ベンダーはソフトウェア定義ストレージ(SDS)の構築に注力している。SDSは仮想マシンだけでなくコンテナで動作するワークロードをサポートし、優れたアジリティー、柔軟性、回復力を備えたデータサービスを提供する」
「ハイブリッドクラウドでのシームレスなデータモビリティーをサポートする自律運用を構築することに大きな重点が置かれる。ハイブリッドクラウドには、エッジに配置されるインフラも含まれる」
フラッシュの時代
ストレージベンダーは、ストレージとデータ管理ソフトウェアの改良を続けている。これにはエッジに配置するハイパーコンバージドインフラのソフトウェアも含まれる。これに伴い、各社はフラッシュストレージに格納するデータの増加にも対処している。
「フラッシュは当面の間は存在し続ける」と話すのは、NetAppのアジア太平洋地域でクラウドアーキテクチャ部門のCTO(最高技術責任者)を務めるマット・スウィンボーン氏だ。
「フラッシュ市場はパフォーマンスを追求する製品と容量を追求する製品に二分されていた。QLC(クアッドレベルセル)の登場により、企業向け市場はコスト効率の高いストレージが増加している」
「パフォーマンス面では永続メモリ製品の台頭が続いている。フラッシュ市場は2つの方向へ加速を続けると見ている。一つはパフォーマンス方向、もう一つは経済性の方向だ」
IDCのアローラ氏は、フラッシュストレージベンダーは高密度フラッシュを実現するためのイノベーションを続けるだろうと話す。そうなれば、ユーザーはオールフラッシュアレイでパフォーマンスと容量を最適化できるようになる。
フラッシュベンダーは、フラッシュの耐久性を高めて寿命を延ばす取り組みも行っている。フラッシュの耐久性は、データの書き込みと消去の回数で決まる。オールフラッシュアレイベンダーは、ウェアレベリングとブロックをインテリジェントに管理できるファームウェアを作成している。
「小さなランダム書き込みは大きなシーケンシャル書き込みよりもフラッシュメディアの寿命を縮める。システムベンダーは、フラッシュメディア全体での均一なデータの書き込みと消去をソフトウェアで実現している」(アローラ氏)
残り続けるHDDとテープ
HDDはフラッシュと組み合わせたハイブリッドアレイの形で生き残るとアローラ氏は考えている。HDDのコストは依然フラッシュよりも低く、高速性を必要としない二次的なワークロードやバックアップおよびアーカイブ用途に適している。
「企業には、アーカイブ、二次コピーや三次コピー、テストと開発環境などに対するニーズがまだある」と話すのは、HPEでアジア太平洋地域のハイブリッドIT部門の主任テクノロジスト兼プリセールスマネジャーを務めるポール・ヘイバーフィールド氏だ。
HDDの製造にも研究開発にも多額の「埋没費用」があり、メーカーは市場が働き掛けるまで、できるだけ長くこれを利用しようとしていると同氏は補足する。
Lenovoのカルニック氏は、1TB当たりのフラッシュのコストはHDDのコストに近づいており、その差がなくなるときが最終的な転換点になると考える。同氏によると、メーカーは既に15,000rpmのHDDの製造を中止しており、10,000rpmのHDDの製造も間もなく終了するだろうという。
「7,200rpmのHDDは何とか持ちこたえているが、HDDはいずれ廃れるだろう。誰もが知っているストレージが見直されるのは興味深い」(カルニック氏)
テープについてはどうだろう。NetAppのスウィンボーン氏は、ストレージ技術の終了を予測する危険性について注意を促す。テープアーカイブに多額の投資を行っている企業はまだあり、これを変えるには非常に明確なビジネスケースが必要になるという。
テープに格納したデータを取り出し、オブジェクトストレージなどに変換して機械学習や他の分析ソリューションのベースとなるデータレイクを作成することにメリットを見ている業界もある。
「こうしたプロセスには時間も費用もかかる。だが予定外のダウンタイムの回避、メンテナンスコストの最適化、研究機関向けの医学的洞察の向上などのビジネスケースを構築できる企業は、このプロセスから大きなメリットを得ている。しかしこうした企業は例外的だ」(スウィンボーン氏)
ヘリウムドライブとDNAストレージ
HPEのヘイバーフィールド氏によると、SSDの後継技術はまだ明らかではないという。
同氏は次のように話す。「現状のフラッシュのパフォーマンスを最大限に高めることができるインタフェースやプロトコルに大きな変化がある。NVMeや、NVMe over Fabricsのような相互接続がストレージアーキテクチャの次の大きなディスラプションになると予想する」
ヘイバーフィールド氏は、次世代SSDの形でNANDフラッシュの後継となるものを期待しているが、どのようなものがいつ出現するかは明確ではないという。「SSD業界は現在、ストレージクラスメモリ(SCM)を開発している。SCMはDRAMの速度と書き込みサイクルでNANDフラッシュの永続化を実現し、NANDの主な2つの欠点を克服する」と同氏は話す。
注目すべきもう一つのストレージ技術が「ヘリウムドライブ」だ。
理論上、ヘリウムドライブは摩擦の発生を最小限に抑えられるため、あらゆるストレージベンダーが抱える最も大きな問題点の一つを解決する。
「将来どこかの時点でフラッシュに取って代わる可能性があるとしても、ヘリウムドライブは非常に高価だ」とLenovoのカルニック氏は話す。ただし、1TB当たりのコストに大きな差が残ったとしても、しばらくはヘリウムドライブとフラッシュストレージが共存状態になると同氏は考えている。
Pure Storageでアジア太平洋地域のCTOを務めるマット・オーストビーン氏は、非常に小さな情報のパケットを格納する手段としてDNAの使用を挙げている。ただし、この技術のデータ書き込み速度はフラッシュストレージよりも1億7000万倍遅い。
オーストビーン氏は次のように話す。「DNAからデータを読み出す能力も課題になる。首にぶら下げることができるDNAの液体にビットコインの情報を保存しているとしよう。重要なのは、恐らく終末期に誰かがその情報を読み取ることだろう。DNAの液体を研究室に持ち込んで情報の読み取りを依頼しても、情報が手元に来るまで1〜2日待つことになるだろう」
「DNAには多くの課題がある。DNAは魅力的であり、DNAストレージの長期的な性質には心が引かれるが、この先どうなっていくかはよく分からない」
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