コンパイラ最適化技術の第一人者フランシス・アレン氏が8月4日、自身の誕生日に88歳で亡くなりました。アレン氏は女性初のIBMフェロー(1996年)であり、チューリング賞の受賞(2006年)などでも知られています。
コンパイラとは、プログラマーが書いたソースコードをただのテキストデータからコンピューターが理解できる機械語に変換するためのプログラム。アレン氏は1960年代、数学博士号取得のために得た奨学金の返済のために入社したIBM基礎研究所で、コンパイラの体系的分析と最適化アルゴリズムの開発に画期的な貢献をしました。
アレン氏が1966年に発表したプログラム最適化に関する研究論文は、それまでソースコードと機械語を単純に変換するのが主流だったコンパイル技術に、コードを網状のグラフ構造として捉え、条件分岐があればコンパイル時にそれを解析、不要な条件を自動的に省略して全体を最適化する概念を持ち込みました。
また1970年代初頭には「RISCアーキテクチャの父」として知られるジョン・コック氏と共同で論文”A Catalog of Optimizing Transformations”を発表、今日でも一般的に使われている変換方法の多くを発見し、それについて概説しました。これはコンパイラの最適変換における初の体系的な論文だったとされています。
その後もアレン氏は重要な研究職に携わりつつ、女性技術者をサポートするメンター的な役割も引き受けるなど、男性の多い情報科学分野で女性の活躍を拡大することにも尽力しました。
こうした活動が評価され、2006年には計算機科学において長らく多大な重要性を持つ業績を残した人物に贈られるチューリング賞を受賞しています。
ちなみに、電気・情報工学分野技術標準化や学術研究を行う機関であるIEEEは、今年初頭に”IEEE Frances E. Allen Medal(IEEEフランシス・E・アレン賞)”の創設することを発表し、2022年より計算機科学におけるエンジニアリング、テクノロジーなどで永続的な影響をもたらす革新的な業績を生み出した人物に授与すると発表しています。
アレン氏の構築したコンパイラ技術は現在も多くのコンピューターやスマートフォンなどで使われており、おそらく今後も長く使われていくはず。うつり変わりの激しいコンピューターの世界でも、その根幹部を支える主要な技術はそう簡単には変わることはありません。山登りが趣味だったというアレン氏ですが、コンピューターの世界でも大きな山の頂に立った人物であることは間違いありません。
source:IBM
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August 10, 2020 at 10:35AM
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