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[電子部品業界のM&A]特定技術の取り込みを狙う小規模買収 - M&A Online

電子部品業界 業界別M&A動向レポート

1.業界分析 技術力で高い利益率を実現 世界市場で30~40%のシェア

電子部品は電子回路に使用する部品で、日常のあらゆる製品に搭載されている。スマートフォンやテレビ、パソコン、車などが代表的だ。

日本企業では京セラ、TDK、日本電産、村田製作所などが業界をリードしており、日本企業が世界市場で30~40%のシェアを誇る。中国や韓国、台湾などが低いコストを強みに急成長しているのに対して、日本企業は高い技術力で他社が真似できない製品を開発することにより、高い利益率を実現している。

近年、日本の電子部品業界をけん引してきた存在はスマホだ。

2007年に初代iPhoneが発売され、その後、約10年間で世界中の人々がアップルやサムスン電子などのスマホを使用するようになった。日本の高品質の電子部品はこれらの製品に多く使われており、対製品原価で50%が日本製品だ。

スマホの普及とともに売上高は右肩上がりとなり、俄然高い競争力を持つ。しかし、2015 年頃からスマホ販売の成長性は鈍化しており、一時期には30%あった成長率はマイナスに転じている。

こうした中、各社はスマホに依存しない新しい収益を求め、先行投資を始めた。上記で挙げた主要な電子部品会社は近年、EV(電気自動車)に注力している。

自動車の高機能化によって、自動車の電子部品やソフトウエアの割合は増加傾向にある。各社は高度化・複雑化するEVの電子部品に先行投資し、得意とする高品質な製品を開発し、次世代の収益の柱としようとしている。2018年度、国内の主要メーカー30社の設備投資額は合計で1 兆円を超えた。

今後の電子部品業界の動向は、これらの先行投資が功を奏するかにかかっている。

2.M&A動向 スマホ市場は成長率が低下、EVやIoTへの先行投資へ

電子部品業界では、iPhoneを含むスマホ業界の成長率の低下と、米国と中国の貿易摩擦による景気後退の2つが現状の大きな懸念材料となっている。

成長率の低下は、すでに市場が飽和状態にあり、スマホが多くの人に行き渡ったことが大きな要因として挙げられる。成長率が低下しているにもかかわらず、2018年度の主要メーカー30社の設備投資計画が、前年度19%増加の1兆630億円の予想となっている理由は、「自動車搭載」「IoT」への先行投資にあると考えられる。

電子部品業界でM&Aを活用して売上、時価総額ともに年間約10%も成長させたのが、村田製作所である。同社のMLCC(積層セラミックコンデンサー)は世界シェアトップの31%を誇り、アップルのiPhoneに多く使われている。

電子部品業界にみられるM&Aは、自社より大幅に規模が小さく、特定の技術を有する企業を買収するケースが多い。これは規模を拡大するためのM&Aというより、必要な技術を自社に取り込むことが狙いであり、業界では今後もその流れが継続すると思われる。

M&A情報誌「SMART 2020年4月号」より

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