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未来は過去より悪くなったことがない。テクノロジーへの関心が世界を進化させる【高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」】(FINDERS) - Yahoo!ニュース

現在の新型コロナウイルスをはじめとした疫病、そして戦争や差別、環境問題などが日々ニュースに載ります。ほとんどは世界の危機を伝えることです。一方で、世界はずっと過去より良くなってきていると僕は思います。少なくない日本人は未来について悲観的だと言われますが、実際は多くの技術が日々世の中を変えています。僕は進歩とその原因であるテクノロジーにもっと注目すべきだと思っています。

日本はテクノロジーについて不感症になっている?

アメリカのマーケティング会社Edelmanは、毎年Trust Barometerという「どういうものが信じられているか?」という世界的な調査をしています。

2019年の調査(PDF)では、日本を含む先進国はハイテクへの信頼感が低いとして上げられていました。「テクノロジー分野への信頼」について、中国、インド、メキシコ、インドネシアなどの国々が90%近い数字を出しているのに対して、アメリカでは73%。日本はグループ内で一番低い66%を示しています。実際に、SXSWやTEDのような先進国のインテリが集まるフェスでは、「テクノロジーの暴走」はよく出てくるテーマです。

2020年の調査(PDF)では、テクノロジーについてさらに深掘りしています。「オートメーションが人間の仕事を奪うか?」「5Gが世の中の変化を起こすか?」「VRが変化を起こすか?」などの問いに対して、日本はいずれも「何も起こらない」と考えているグループにいます。フランスのような国では「テクノロジーの暴走を憂う」みたいな項目のポイントが高いのですが、日本はそこも高くなく、総じてテクノロジーに対して不感症なのかもしれません。

江戸時代の殿様と僕たちはどちらが快適か

日本人がテクノロジー不感症だったとしても、実際はテクノロジーによって日本の生活も大きく変化しています。この50年、平均身長と平均寿命はどちらも大きく伸びています。経済成長が止まり「失われた20年」と言われる時代でも、衛生や医療は進化しています。

100年単位だとさらに大きく違います。たとえば、日本に生きているほとんどの人が、江戸時代の殿様より良い栄養状態にあり、長い健康寿命にあります。それはこれまで蓄積されてきたテクノロジーのおかげです。

移動を例にあげると、岡山城には昔の殿様が乗った駕籠が展示されていて、今では誰でもためしに乗ってみることができます。

自分も乗ってみて、サイズを測ってみたのですが、前後が110cm、幅84cmぐらい。ちなみに国際線のエコノミークラスの座席はは前後84cm, 左右50cmぐらいです。3列の高速バスだと前後100cmを超えます。殿様の駕籠はそれより横幅は広いですが、リクライニングもしないしクッションも薄く、上に行くと台形に狭まるし、手すりもなし。乗り心地は飛行機のエコノミークラスと同等か、もっと悪いと思われます。

バスも飛行機も、もちろん駕籠よりは揺れないので、乗り心地はいいでしょう。エンジンなどの内燃機関の他、機体やサスペンションといった機構、椅子の素材やデザイン、道路や運用の仕組みなど、積み重なった多くの発明が、現在の市民の生活を押し上げています。

安心してタクシーに乗れなかった新興国では、UberやDidiのようなシェアライドサービスで、移動が一気に快適になりました。そうした劇的な進歩は、「社会を変えるようなビジネスを成功させた人」とそうでない人の収入格差を広げますが、社会全体がアップデートされたことで、大金持ちになれなかった人も、前より良い暮らしにはなっています。

そういう劇的な進歩に触れる機会の多い新興国では、テクノロジーへの信頼が大きいのは理解できます。

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