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「止まらない本離れ」「街から本屋が消える」……。暗い話が目立つ出版業界だが、そんな“衰退論”を覆そうとする人々がいる。顧客が本に出合う場を変え、出合い方を変え、出合う意味までも根本から考え直す。そこには他業界にとっても価値がある、人口減時代に生き残るマーケティングのヒントがある。
書店を訪れ、店内を歩いていると、通路に面した平台に並べられた本にふと目が留まる。知らない本だが、手に取ってパラパラとページをめくると興味が湧いてくる。改めて平台に目を戻すと、両隣の本も面白そうだ。気づくと、来店前には想像もしなかった本を2冊、3冊と持ってレジに並んでいる――。
読者の中には、そんな体験をしたことがある人は少なくないだろう。目的の本をネット通販で購入するのとは違い、思いがけない本との出合いがあるのが書店の魅力だという声は多い。しかしこうした瞬間に、「なぜその本が自分の目に入ったか。なぜその本を自分が手に取ったのか」と考えたことがある人はどれだけいるだろうか。
平台の本の積み方は1日1種類しかない
「売れる売れないを予想しながら、お客さまが手に取りやすく、見栄えも良く、隣同士の関連も見ながら、この本の隣にはこの本がいいはずみたいなことも考えて並べていく。そうすると、実は平台の積み方はその日1種類くらいしかないと思うんですよね」
そう語るのは、元書店員の矢部潤子氏。パルコブックセンター渋谷店をはじめとする東京の有名書店で働き、「立ち止まらない書店員」として知られた人物だ。常に店内を動き回り、棚や平台を手入れし続けてきた36年間の経験を、2020年1月に著書『本を売る技術』(本の雑誌社)としてまとめて出版した。上記の発言はその一節だ。
同書の中で矢部氏は、売り場での本の並べ方や見せ方から発注の心得まで、書店員としての基礎をこと細かに説いていく。売れそうな本は平台のどこに置くか。同じ著者の本をどの順番で並べるか。いつ、どのタイミングで追加発注をかけるか。もちろん、こうしたノウハウに唯一絶対の正解があるわけではない。しかし、矢部氏の中には一貫した売り方のロジックがある。
平台への本の積み方一つにも書店員の意図がある。奥への見通しを遮らないよう、平台の端には本を高く積まない(イラスト:鈴木浩平)
来店客は左から右へ通過すると想定し、最も手に取りやすい手前左端に売りたい本、売れる本を積む。数字は各位置の「売りたい気持ち・売れ行き良好度」の順位(イラスト:鈴木浩平)
矢部潤子著『本を売る技術』(本の雑誌社)
「書店を訪れる客にとっては売り場づくりの工夫は興味深いが、そんなノウハウは書店員にとっては常識なのではないか」と考える読者もいるかもしれない。昨今はそれぞれ特色を押し出した独立系書店やブックカフェが人気を集めている。地道な売り場づくりの段階はとうに過ぎ、独自の選書やイベントを駆使した高度な売り方が求められる時代なのだ、と。事実、本の雑誌社営業部の杉江由次氏に本書の企画(当初はウェブ連載)を持ちかけられたとき、矢部氏自身がそう思ったという。
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April 07, 2020 at 03:10AM
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