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『旅にトラブルは付き物』を覆す。安全な海外旅行をサポートする「Sitata」が創る未来 - ライフハッカー[日本版]

ストライキ・デモによる交通機関の遅延や感染症の発生など、旅には予測できないトラブルが付き物。最近では、新型コロナウイルスの影響で、海外旅行の予定をキャンセルした人もいるかもしれません。

でも、ご安心を。そんな不安を払拭してくれるサービスとして、いま注目を集めるアプリがSitata(シタタ)です。

地球上で最も包括的な旅行安全プラットフォーム」をうたうSitataは、手軽に世界中の状況をリアルタイムで確認し、旅中のトラブルを未然に防ぐことができます。

そのSitataの創業者・CEOであるアダム・セント・ジョン氏に、サービスの着想を得たきっかけや日本へのローンチ予定はもちろん、世界で蔓延している新型コロナウイルスに対してとるべき対応などについてお話を伺いました。

アダム・セント・ジョン氏
Sitata創業者・CEOのアダム・セント・ジョン氏
Photo: Kenya Chiba

――まず初めに、Sitataを開発するに至った経緯について教えてください。

アダム・セント・ジョン氏(以下アダム):私自身が、旅行中にひどい経験をしたことがきっかけです。昔、旅先で運悪く暴力的な抗議デモに出くわしたことがあり、外国人というだけで怖い思いをしました。

別のあるときは、ベトナムで1日中バスに閉じ込められた末、町に降りたったのが夜の10時すぎでした。お腹がぺこぺこなのにどこもお店が開いていなくて、仕方なく最初に目に入った屋台で食べたら、見事にあたってしまって。最悪の食中毒でした。あのときは、何とか生き延びた感じです。

こうした経験を経て、モバイルテクノロジーを使えば同じような旅行者の役に立つと考えるようになりました。第一に、そのシチュエーションを回避すること。第二に、そうなってしまったときに必要とするヘルプを受けられるよう旅行者をアシストすること

トラブルが起きた時ってどう対応すべきなのか、はたまた電話のかけ方すらわからなかったりするじゃないですか。そんな問題を解決したいと思ったんです。

――ご自身の経験によるものが大きかったのですね。また、Sitata創設者でもある父親からの影響もあったと聞いています。

アダム:そうです。父はかつて、政府の緊急事態準備・対応チームのトップでした。とりわけSARS、エボラなどの感染症やテロといった非常時においてカナダ国民の健康・安全・幸福を担う仕事です。

父のチームは2000年代前半、病気の発生を初めてデジタルで検知するシステムを開発しました。それは、さまざまな言語のブログなどから情報を収集し、異変の兆候を察知するというシステムです。これは2003年に発生したSARSの早期発見にも寄与しました。

Sitataには、これをもとにアルゴリズムを改良し、新たに開発したシステムを活用しています。

――あなたも同じバックグラウンドを持っているのですか?

アダム:私はどちらかというと、機械系エンジニア出身です。初期段階のソフトウェア開発の経験や、独学でウェブプログラミングの勉強をしたこともありました。その経験を活かして、父と一緒にビジネスチャンスを作れるんじゃないかと思ったのです。

今は、父がコンテンツチームと公衆衛生情報の担当、私がプロダクトと事業開発の担当として、2人の間で責任・役割を明確に分けて進めています。

アダム・セント・ジョンさん
Photo: Kenya Chiba

――Sitataのサービス開始から現在までの道のりを簡単に教えてくれますか?

アダム:最初はウェブプラットフォームとして2012年に創業し、2014年にモバイルアプリをローンチ。現在、年間で100万件を超えるユーザーの旅をサポートしています。

個人ユーザーだけでなく、旅行保険会社などの大企業にも私たちのサービスをライセンス供与しています。彼らが私たちのサービスとあわせて保険商品を販売しているので、現在ユーザーは増加傾向にあります。

先日、私たちのプラットフォームに大きなアップデートを実施し、個々の旅行者により注目すると同時に、海外への出張者向けのサービスにも力を入れています。そうすることで、BtoBのサービスも展開できると見込んでいるのです。

――個人ユーザーだけでなく、ビジネスユーザーへの展開もこれからより一層期待できそうですね。具体的にはSitataではどのようなサポートを得られるのでしょうか?

アダム:今のところ、健康と安全にフォーカスした情報を提供しています。

旅行代理店やホテル・フライトの予約確認メールをSitataに送れば、システムが自動で内容をスキャンし、ユーザーの旅程を把握します。その情報をもとに、ユーザーが滞在する地域、訪れる予定のある観光地などの周辺情報を集め、必要な情報を提供しています。

たとえば、渡航先に行くために必要なワクチン情報フライトの遅延・欠航のほか、周辺の病院に関するレコメンドなどもそうです。これらの情報はダウンロードできるので、オフラインでも確認することができます。

私たちのソフトウェアでは、グローバルニュースや、Twitter・FacebookなどのSNSをチェックすることで、旅行の妨げになる恐れのある世界中のあらゆる状況を把握できます。

それは、現在発生している新型コロナウイルスの発生であったり、暴力や抗議デモであったり、もっとシンプルにタクシードライバーによるストライキだったりしますが、ユーザーのGPSや旅程に応じて、必要な情報をこちらで選択して配信しています。

トラベルアラートのスクリーンショット
旅行先となる地域や国の危険度や状況を確認できる。情報は随時アップデートされ、最新の情報を得ることが可能。
Screenshot: Sitata

――ユーザーはリアルタイムで必要な情報を得られるということですね。

アダム:ほぼリアルタイムです。こちらは事態が起きている正確な場所を把握していますし、計画性のある抗議デモやストライキなどの場合は事前にその情報を入手できます。

ですから、渋滞やフライト遅延などの交通トラブルのほか、時には身の危険となるような脅威を回避することができるのです

――そうした情報はどのように集められているのですか?

アダム:Sitataがもつソフトウェアのいわば“ブラックボックス”の部分が情報収集を担っています。機械学習を用いた秀逸なフィルターを駆使し、病気の発生や暴動などの事件を見つけるようアルゴリズムを訓練してきました。

とはいえ、完全に自動化しているわけではなく、アナリストがフェイクニュースでないことや、発生地が間違いないことなどを確認したうえで、できるだけ速やかに情報をお届けしています。

――アプリには無料版と有料版があるのですよね。2つの違いはどのような点にあるのでしょうか?

アダム:渡航先の情報や旅行の事前準備については無料版で確認できます。

その後のリアルタイム情報や通知については有料にしています。さらに、ユーザーの安全情報をアプリに登録した第三者に通知する機能も用意しています。

たとえば、私は明日から香港に行くのですが、新型コロナウイルスのこともあって妻が心配しています。そんなときに、位置情報から私がホテルに到着したことを検知して通知することで、妻は私が無事であると安心することができます。この機能は、子どもを旅に送り出す親にとっても重要な機能になるでしょう。

とはいえ、まだまだ改善すべき点はたくさんあるので、日々開発に取り組んでいます。

Sitataアプリのスクリーンショット
有料版の「Sitata Plus」では、自分が安全に目的地に到着したことを家族や友人に知らせることもできる。
Screenshot: Sitata

――ユーザーからはどのような反響がありますか?

アダム:カスタマーサービスにチャットを用意しているのですが、そこで聞かれる声は今のところ高評価です。ある意味、今までなかった新しいサービスなので大きな価値を提供できているのだと思います。

世界中で知らなければならないことがたくさん起きていて、行き先がどこであっても、それをスマホでいつでも確認できるのがいいのでしょう。

――いろいろなエピソードが寄せられそうですね。

アダム:あるユーザーはアメリカ旅行の際、自分の身を守るのにSitataが役立ったと聞いています。アメリカでは、あちこちで発砲などの事件が起きていますから。

中にはジャーナリストのユーザーもいて、イラクやシリアなどの危険地帯でも私たちのサービスが使われています。

他方で、パリのような比較的安全な場所であっても、実際には抗議デモやストライキが頻繁に起きたりしていますよね。それが身の危険になる可能性は低くても、エッフェル塔などの観光地に行くのに交通網が混乱して厄介だったりするケースもあります。

このように、危険な地域から安全な地域まで、ありとあらゆる場所でSitataが使われていることが、私たちとしてはとてもエキサイティングです。

アダム・セント・ジョンさん
Photo: Kenya Chiba

――たくさんの反響があるのですね。さまざまなユーザーから信頼されていることがわかります。一方で、各国政府が発表する公的な情報もある中で、Sitataはどのような立ち位置にいるのでしょうか?

アダム:そもそも、両者は似て非なるものです。まず言えることは、Sitataは情報が豊富だということ。政府は、タクシー業者のストライキなどの小さな情報は取り上げないでしょう。また、政府は対応が後手後手になりがちで、情報の発信が遅れる場合もあります。

信憑性に関していえば、私たちの情報にはソースとなった新聞記事やSNSの投稿など、必ず情報元へのリンクが添えられています。ですから、必要とあらば情報の信憑性をユーザー自ら確認できるようになっています。

とはいえ情報の信憑性を保証するのは私たちの仕事なので、私たちのチームは情報の真偽の確認を徹底しています。

――確実な情報を速やかにユーザーに提供するというのがSitataの最大の特徴なのですね。いま世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスについても早くから検知していたと聞きました。

アダム:最初に検知したのは2019年12月30日です。その頃、中国では肺炎が多く報告されていましたが、肺炎は珍しくない病気ですから、当初はユーザーへ警告していませんでした。

でもその2日後には、それがただの肺炎ではなくもっと新しくて特異なものであることが、あるニュース記事をきっかけに判明しました

そこで、2020年1月2日には中国に滞在中のユーザーあるいは旅行予定のユーザーに対して、公式の警告を出したのです。これはどのメディアよりも、どの政府よりもずっと早いタイミングでした。

今はウイルスが香港、日本、タイなどへ広がる状況を注意深く監視しているところです。

Sitataのアプリ画面
Photo: Kenya Chiba

――新型コロナウイルスに関して、多方面から情報提供の依頼があったそうですね。

アダム:先ほどお話したとおり、私たちは保険会社にもサービスを提供しているので、彼らから支援を求められたケースはあります。

当然のことながら、保険会社のコールセンターには問い合わせが殺到しているようなのです。一体どこで何が起きているのか、保険でカバーされるのかなどの情報を知りたいのでしょう。

そうした内容について保険会社は公式の見解を述べる必要がありますから、公衆衛生面で私たちのアシストを求めてきたのです。とはいえ私たちは、彼らのビジネス面にはノータッチですが。

――今回の件をきっかけに、世界におけるSitataの役割も今後重要度が増すと推定されます。新型コロナウイルスに対してとるべき対策について、Sitataの一員として助言をいただけますか?

アダム:まず何よりも、事態の把握から始めてください。現在の状況を正確に知ることが先決です。

次に、個人による衛生対策を行ないましょう。新型コロナウイルスにはマスクが有効とされていますが、普通の外科手術用マスクでは不十分で、N95規格に準拠した少し厚めのマスクが推奨されています。

ただし、正しく顔にフィットしていなければ意味がありません。また、世間でも報道されているように頻繁に手を洗う、アルコールで手を消毒するなどの予防を各自が徹底することで、ウイルスの拡散防止につながります。

Video: Sitata via YouTube

――世界で「Sitata」が今後どのように展開されていくのかも気になるところです。これまではどのような国や地域でローンチされてきたのですか?

アダム:最近までは、私の母国語でもある英語を話す市場をターゲットに据えていたんです。北米、イギリス、インド、オーストラリアなどがその代表ですね。

そのほかにスペイン語とフランス語をサポートしており、今は日本にも大きなチャンスがあると考えています。そこで現在、日本語への翻訳などいろいろな準備を進めているところです。

――日本への進出はいつから考えていましたか?

アダム:もちろん、日本がとても強力な渡航先であることはずっと前から認識していました。でも、魅力的な市場であると同時に、言葉や文化の壁というのが大きな課題でした。

現在はようやくパートナーによるサポートを得るチャンスに恵まれ、日本進出に向けて着実に進んでいます。日本人は優しく迎えてくれるし、おもてなしの精神も素晴らしいのでとてもワクワクしていますよ。アジアでのローンチも日本が初めての国となる予定です。

ちなみに、まだ開発途中なので不完全な状態ではありますが、現在でも機械翻訳したものはダウンロード可能な状態になっています。正式な日本語版の公開は、数カ月後になる見込みです。できるだけ早くローンチしたいですね。

――近い未来、Sitataを利用できるのを楽しみにしています。最後に、今後どのように認知とプレゼンスを築いていくか、その展望を教えてください。

アダム:愛されるプロダクトにすることで、ユーザーによる口コミで広がっていくような存在になりたいと思っています。皆が広めてくれるようになるまで、ひたすらいいサービスを作ることに集中していきます。

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Screenshot: Sitata

Source: Sitata

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