中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染による肺炎の流行が続く中、果たして「いつ収束するのか」という疑問に対して、世界中でさまざまな意見が出ている。また旅行業界への影響はいつまで続くのだろうか。飛び交う予測などをまとめた。
中国での感染のピークは過ぎたのか?それともこれから?
2月10日、トランプ米大統領はホワイトハウスで開かれた州知事を対象にした演説で、「感染拡大は、4月には収束するだろう」と語り、春になって気温が高くなることでウイルスが死滅するとの見解を示した。
一方、同じく2月10日に北京市内の病院を訪問した中国の周近平国家主席は、「ウイルス感染の状況は依然として非常に深刻な状態にあり、予防、制御は膠着した状態にある」と述べたことを、中国の央视新闻が報じている。
新型コロナウイルスの感染拡大のピークがいつになるのか、世界の研究機関の意見も分かれる。1月29日、英国の医学雑誌Lancetには、感染のモデルを使った概算から中国国内の感染者数は発表されている数字よりも実際はもっと多いのではないかとの説が掲載された。それらの感染者の一部はすでに中国国内の他の都市にも移動しているとの推測から、「感染のピークは3月後半から5月、もしくはそれ以降となる」としている。
一方、感染のモデルを分析研究している英国のLSHTM大学からは、前向きな予測が出されている。「武漢での感染の広がりは、2月中旬から下旬にかけてピークに達し、少し遅れて中国国内の他都市での感染者数も山を越える」という研究結果が、2月8日発表されている。
また、2月10日にWHOのTedros Ghebreyesus氏は、シンガポールでは中国に渡航歴のない感染者が出ていること。シンガポールの国際会議に出席した英国人が感染に気づかぬままキャリアとなり、次の渡航先のフランスで会った欧州各国の人々に感染が広がったことなどを注視。中国以外の各国に現在認識されている新型コロナウイルスの火種が、より大きなものへと拡大する可能性について言及した。
ピークから約6カ月後までに回復する?
新型コロナウイルスの感染拡大によって打撃を受けている航空業界はどのような状況にあるのだろうか。全世界のフライト情報を提供するOAGは、SARSが発生した2003年と、エボラ出血熱が発生した2013年を例に、今後の座席供給量の回復見込みに関する分析を発表した。
それによると、現状では「中国の国内航空サービス市場と、一部の国際市場では、中国がウイルスを封じ込めようとすることに伴い、これまでにないほど航空座席数が低下している」と指摘。SARSやエボラ出血熱が流行した際は座席供給量が減少したものの、いずれも翌年には回復し、その後プラスの傾向に戻ったと分析している。特にSARSの際は回復した後の成長率がウイルス発生前よりも高く、反動ともとれる現象が起こっていたようだ。同社は「通常は混乱のピークから約6カ月後までに回復する」との見通しを示している。
中国からの渡航者の入国を禁止するといった措置をとる国もある。米国、豪州、ロシアは中国との飛行機の運航停止や、国境の人的往来を制限している。米国では過去14日以内に中国に渡航した外国人の入国を拒否し、中国湖北省を訪問した米国市民に対し、最大2週間の隔離措置を取っており、オーストラリア、台湾、ベトナムも類似の措置を打ち出している。
データ・コンサルティング会社のTourism Economicsは、中国人の訪米旅行が新型コロナウイルス発生前のレベルに回復するには4年かかると分析し、よりシビアな見解を示している。同社は中国線運休によるアメリカの航空会社の損失額が16億ドル(約1,757億円)に上るという試算も発表した。
JATAも危機感とともに会見「必ずリカバリーする時期が来る」
JATA(日本旅行業協会)の理事・事務局長である越智良典氏は2月13日、東京・定例会見において、新型コロナウイルスへの対応を説明。人混みを避けようとする心理から旅行に行くことを止める動きが出ており、「訪日を中止する中国人観光客は40万人におよぶとの報道よりもさらに多くの人が取りやめる可能性がある」と言及した。感染が収束していない直近だけではなく「1~2カ月間、需要が落ち込む可能性がある」と危機感を示すとともに、「必ずリカバリーする時期が来る。その時を見据えて今どう動くかが重要」と語った。JATAでは『新型コロナウイルス感染症に対するJATA対策室』を12日に設立、会員各社への情報提供や経営支援、リカバリー策の協議に取り組むという。
いずれにしても、新型コロナウイルスによる国内の観光事業者へ影響は避けることができない。政府も新型コロナウイルスの流行により影響を受けるおそれのある『中小企業・小規模事業者への相談窓口の設置」、対応に当たっている。
JATAの越智氏の言葉にあった「発生期フェーズ、回復準備フェーズ、回復期フェーズ」。それぞれのフェーズでやるべきことを見据え、しっかりと対応していく必要がある。
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February 15, 2020 at 02:54PM
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